リコーは、1990年までは、国内を中心に、MIFを積み上げ、アフター収益を確保。この実績をもとに、新規顧客を獲得し、既存顧客には、アナログからデジタルへの転換、モノクロからカラーへの転換などを進めてきた。さらに、国内成功モデルをベースに、買収によって海外展開を加速。14年連続の増収増益を達成し、2007年度には最高益をあげている。だが、2008年度以降、リコーの稼ぎ頭であるA3MFPの市場鈍化が進んだこと、A4MFPやLPが拡大したものの、サービス事業の利益率や金額が減少。市場規模拡大を前提とした戦略が成り立たなくなってきた。

市場規模の拡大を前提とした戦略が成り立たなくなるようになった

「需要台数が横ばいのなかで、MIF獲得のための価格競争に売価下落が継続し、各社のカラー化も一巡し、カラー機への置き換えによる規模拡大は困難。しかも、モバイルの浸透やインフラ環境の変化により、働き方が多様化し、ペーパーレス化が加速しており、アフターサービスによる収益に大きな影響を及ぼすことになる。5大原則を利益重視の観点で抜本的に見直す必要がある」と語る。

今回の中期経営計画の基本姿勢もこうした市場変化を捉えたものとしている。

中期経営計画3つの基本プラン

2017年度からスタートする第19次中期経営計画では、具体的な財務目標として、最終年度となる2019年度までに、構造改革効果で累計1000億円以上、2019年度の営業利益で1000億円以上、3年間のフリーキャッシュフロー(ファイナンス事業を除く)で1000億円以上を目指す。構造改革効果の内訳は、コスト構造改革で450億円、業務プロセス改革で550億円。「構造改革は、いいところは継続しながらも、聖域は設けない。だらだらやるのではなく、早期の効果実現を目指し、施策の前倒しを進める。2017年度には構造改革をやりきるつもりで取り組む」と述べた。

RICOH再起動をベースにした中期経営計画の基本プランは、「構造改革」、「成長事業の重点化」、「経営システムの強化」の3点だ。

市場を直視し、リコーを再起動させるという

構造改革については、「これまでの構造改革では、コスト削減が中心となっていたが、今回の構造改革は、収益構造を変えるものになる点が大きく異なる」と前置きし、「過去にも構造改革はやってきたが、計画は立てたものの、あとは現場に任せきりということもあった。また、置き去りにされている施策もあった。これまでのリコーは、アフター収益で稼いでいたが、これを見直し、事業を細分化することで稼ぐエリアを広げる。また、不採算案件や不採算のMIFがあり、そこを縮小していく。手間をかけている作業をなくすことで本社の固定費削減にも取り組む。同時に、2020年度以降の第20次中期経営計画で成長する事業の種を捲くことにも取り組みたい」とした。

さらに、ものづくり自前主義の見直しと、直販および直サービスの見直しにも乗り出す姿勢を明らかにする。生産拠点の統廃合や消費地拠点の役割の再定義、自社開発機種の絞り込みによる開発費の削減に取り組む。

とくに米国地域においては、「直近の課題である」と位置づけ、現在、8割を占めている直販体制を見直し、ディーラーとの協業強化、インサイドセールスを利用した営業生産性の向上、バックオフィス人材の削減に取り組む考えを示した。

そのほか、新機能を搭載した機種を拡充することで、保守プロセス改革にも着手。「メーカーである技術力を活用し、新たな仕掛けを搭載することで、顧客のダウンタイムの削減とサービスエンジニアの生産性向上を図る。これを活用することで、2019年には20~30%の生産性向上を図ることができる」という。

なお、カメラ事業については、先頃、約100億円の減損損失を発表し、今後の動向が注目されていたが、「360度カメラのTHETAは、これを軸にサービスを追加することで、事業の立て直しを図る。また、個人向けカメラからは撤退はしないが、機種の品揃えは一部縮小することになる」とし、カメラ事業撤退の一部報道を否定した。