マンゴーの栽培については、新規事業の観光事業も少し関わってくる。沖縄セルラー電話の観光事業が沖縄の特産品を販売するECサイト事業を譲り受けた。その流れで、担当者が宮古島のマンゴーを仕入れに行ったところ、宮古島では日照不足により、マンゴーの収穫量が例年の半分以下になったことを聞きつける。

そこで植物工場事業の出番となった。日照不足が問題であれば、レタスの栽培で培ったLEDを使っての補光技術が活用できる。こうした流れから、KDDI、琉球大学、スカイディスクといったパートナーとともにマンゴー栽培の実証実験が始まったのだ。

沖縄を支える事業に

沖縄の役に立つ新規事業を――。そんな思いから始まった植物工場事業。県内最大級の生産者になったとはいえ、沖縄のレタス需要を賄いきれるものではなく、特に夏場は圧倒的に足りない状況にあるという。だからこそ、この先も第3工場、第4工場と事業を拡大していくのだろう。

そう思ったが、加賀氏に聞くと、どうやらそれは違うようだ。レタスだけではニッチな事業にしかならず、他の品目も検討しているという。そして、遠隔監視システムの販売やコンサルティングを通じて、植物工場を希望者をサポートする役割を担っていく。新たに工場を建設して生産量を高めるよりも、ノウハウ活用のほうが価値あるものと考えたのだろう。

さて、この植物工場事業であるが、情報量が極端に少ないのは、おそらくその規模にあると思われる。沖縄セルラー電話の2017年3月期の営業収益は約630億円と予想。対して、植物工場事業の規模は、主力のレタスの栽培量から計算しても1億円にも到達しそうにない。会社全体からみたら、ごく小さなものに過ぎないからだ。

だが、レタス、バジル、マンゴー、栽培キットと活躍の場は広がっている。目指す方向も沖縄の農業をサポートするという意義の高いものであり、存在自体は、利益の多寡では表現できそうにない。謎のビジネスは、沖縄を支える価値ある事業であり、これからも広がりが期待できる事業だったのだ。