気象予測に人工知能はどこまで役に立つのか
気象予測は天候の観測データを元にするものの、最終的には予報士による勘や経験に頼る部分が多いシステムだ。もちろん、観測データを広く深く積み上げていけば予測精度が高まるはずなのだが、狭い地域の予測であっても、地球の裏側の海水温の上下までも考慮しなければならないとなると、人間の手に余るものがある。
近年急速に成長しつつある人工知能(AI)とディープラーニングなどの新しい解析手法は、人が処理しきれない莫大なデータを効率良く処理し、これまで気づかれなかった新しいパターンの発見につながる点で大いに注目されているが、残念ながらまだAIを使った気象予測を実施している企業はほとんど知られていない。
そういう視点から、現在世界のAI業界を牽引する企業の一つであるIBMが気象予測という分野に参入してくるのは自然な流れでもあり、また大きな一歩だともいえるだろう。IBM自身は、機械学習による気象予測システム「Deep Thunder」を導入済みではあるが、これに加えてWatsonによってデータを解析し、3カ月程度先(中長期予測)の正確な予想を作成するという。
ワトソン事業部がシステムを統括
実はこの気象予測ビジネス全体は、日本IBM内ではワトソン事業部の管轄下に置かれる。なぜ、ワトソン事業部がこのシステムを統括するのだろうか。
もちろんWatson自体の予測精度自体にも興味は集まるが、IBM自身はそれよりも、Watsonの開発で培ったノウハウを生かして、ユーザーごとに必要な形にデータを加工し、ユーザーニーズに合った予測を可能にすることを目指しているという。
また、気象予報センター内での予報官の意思決定にもWatsonの能力が生かされるだろう。Watsonが気象予測自体の精度を高めるだけでなく、その結果を利用してさまざまなビジネスに特化した形で出力できるのだから、二度美味しいということになる。