バランス出力とアンバランス出力による音の違いも確かめてみよう。リファレンスにはパイオニアのハイレゾとバランス接続に対応するイヤホン「SE-CH5BL」と、本機に近いスペックを備える通常3.5mm/3極接続(アンバランス)のハイレゾ対応イヤホン「SE-CH5T」を用意した。
privateは2.5mm/4極のバランス出力用ジャックと、3.5mm/3極のアンバランス出力用のジャックを本体のトップに並べて配置している。それぞれに対応するイヤホンを装着するだけで、バランス出力への切り替え操作は不要だ。
バランス出力は一般的な方式のほかにACG (Active Control GND)方式も選べるが、今回は通常のバランス出力を中心に聴いた。試聴するのは、MISIAのアルバム「星空のライヴ SONG BOOK HISTORY OF HOSHIZORA LIVE」から『Everything』(88.2kHz/24bit FLAC)だ。
はじめにアンバランス出力の音から聴く。中低域のつながりがとてもスムーズで、柔らかく暖かみのあふれる声や楽器の音色に包まれる。バランス出力に切り替えると、声のハイトーンの切れ味がぐっと高まって、ピアノのメロディラインが一段と鮮やかさを増した。中高域の音は艶っぽく潤っている。音像の定位が明確になって、ボーカルとバンドの楽器との位置関係がはっきりと見えてくるうえ、奥行き方向の見通しもクリアになって弱音の粒立ちもキリッと立ってくる。低い音のビートもタイトに引き締まっていた。
パイオニアのイヤホン「SE-CH5BL」自体、バランス接続の良さが直感的に味わえる優秀な入門機だ。解像度が高く聴感のバランスもニュートラルなので、プレーヤーごとのキャラクターがとてもつかみやすい。また、音の出方が柔らかく、きめ細かな階調表現力にも富んでいるので、長時間音楽を聴いていても疲れを感じなかった。2.5mm/4極タイプのバランス出力に対応するプレーヤーで広く使えるので、オンキヨーのハイレゾスマホ「GRANBEAT」こと「DP-CMX1」と組み合わせても良さそうだ。
privateのように、バランス出力とアンバランス出力ともに安定したパフォーマンスを発揮できるプレーヤーは、一概に「どちらの方がよりいい音」と言い切るのが難しいのだが、バランスとアンバランスのキャラクターの違いを1台で堪能できるところも一般的なハイレゾ対応スマホにはない魅力だ。普段よく聴く音楽が色んな表情を見せてくれる。
この頃はスマホでばかり音楽を聴いていたという方は、privateの音を聴けば、すぐに音の"潤い"が違うことに気がつくはずだ。もう既にハイレゾ対応のプレーヤー、あるいはポタアンを使っているという方も、コンパクトでかわいいバランス対応のセカンドプレーヤーとして、privateに注目してみてはいかがだろうか。