そして、最後のICTソリューションの売上高は2800億円、営業利益は120億円を見込む。「IoTおよびAIを活用したデジタルサービスを顧客ととも共創することを目指す」とし、システムインテグレーション事業やデジタルソリューション事業を核に、年平均成長率約5%を見込んでいる。
メモリと原子力売却 2つの異なる狙い
新生東芝の前提となるのは、メモリ事業の売却と、ウェスチングハウスの売却だ。
綱川社長は、これを、「海外原子力事業のリスク遮断」と「財務基盤の早期回復と強化」という言葉で表現。同じ株式売却でも、片方はリスクとな事業を切り離し、もう片方は優良事業の株式売却益で財務体質を改善するという異なる狙いを持つ。
「海外原子力事業のリスク遮断」とするウェスチングハウスの株式売却においては、「東芝グループにおけるウェスチングハウスの位置づけを大幅に見直し、戦略的選択肢を積極的に検討する」とし、株式のマジョリティ売却などによる非連結化を含めた再編検討を加速するという。
問題は、経営不振の温床となったウェスチングハウスに売却先が存在するのかといった点だ。だが、綱川社長は、「サービスや燃料などの安定した事業があり、可能性はある」と語る。一部には、連邦倒産法第11条(チャプター11)よる破産申請も視野に入れていると言われるが、それについては、「現時点では決まったことはない」と回答する。米政府の債務保証などもあり、一筋縄ではいかない問題を抱えているのは事実だ。
そして、「財務基盤の早期回復と強化」とするメモリ事業の売却では、4月1日付けで分社化する東芝メモリにおいて、マジョリティ譲渡を含む外部資本の導入も検討しているとし、「これによって、メモリ事業の成長に必要となる経営資源の確保と、東芝グループの債務超過を解消して財務体質を強化する2つの狙いがある」と位置づける。
また、綱川社長は、「メモリ事業は、今後も年間3000億円程度の設備投資がないと成長が続かない。だが、東芝にはそれができない。適切なパートナーと一緒に勧めていくことが正しい判断である」と説明。「オープンな入札を開始しており、3月末までに条件が揃う。半導体技術は国の安全にも絡むことであり、売却先は、政治的問題になる国を避けるという点にも考慮する。メモリ事業の売却は、2017年度の早い時期に決めたい。メモリ事業への外部資本の導入により、2019年までの資金収支は、確実にプラスになる」と語る。
入札企業には、海外勢の名前が取りざたされるが、「日本の企業が入札しているかどうかを含めて、どこが入札しているのかは、具体的な名前はいえない」とする。半導体技術の流出を懸念する動きも、入札に影響を及ぼすことになる。
「再度チャレンジ」する
前任の室町正志氏の社長時代の2015年12月に、東芝は、「新生東芝アクションプラン」を打ち出した。バトンを受けた綱川社長も、就任発表会見では、「私に課せられているのは、室町が先頭になって取り組んでいる新生東芝への路線を引き継ぎ、新生東芝アクションプランによるステイクホルダーの信頼回復、強靱な企業体質への変革である」としていた。だが、このプランはとん挫した。そして、今回の会見では、この「新生東芝」とは違う、新たな「新生東芝」が打ち出された。
「また、振り出しに戻ったといえる状態。新たな気持ちで『新生東芝』に挑む。言葉は同じだが、再度チャレンジする」と綱川社長は語る。
新生東芝は、「再び成長をできる姿」を確立することが最優先事項だ。だが、東芝には、これからの成長を担う柱となる事業が見当たらない。「新生東芝は、社会インフラを核とした事業領域に注力する」と綱川社長は語るが、柱がなく、成長を牽引する事業が見当たらない東芝の姿には疑問符がつく。外科手術から復帰し、東芝が再び立ち上がった新たな姿を見せるには、多くの時間を費やすことになりそうだ。