PRについては、ユニクロ(外国人観光客向けに多国語での案内)やJR東日本(SNSと連動して観光施設の来場者の写真をツイートする)での運用例が紹介されていた。いずれもPepperと、その背後にあるWatsonなどのシステムをうまく連携させた高度で効果的なPRシステムだと言えるだろう。

これまでの導入事例よりもちょっと高度な活用事例も紹介された

個人的にちょっと怖さも覚えたのは、ボーリング/アミューズメントスペース運営のRound 1の導入事例だ。同社は店頭にPeppprを設置して、同社のスマートフォン用アプリの宣伝を表示しながら「電話番号を教えて!」とコールさせ続けたところ、店頭で50件以上の電話番号を取得できたという。ロボットを使うことで心理的なハードルが下がるのはいいが、普通なら教えないような電話番号のようなパーソナルな情報まで教えてしまうようでは下がりすぎだ。Pepperは思ったよりも強力に顧客の懐までググっと迫ることができるのかもしれない。

人型ロボットへの心理的抵抗は低い

Pepperに限らず、人型ロボットを受付やサイネージ代わりに利用する事例は増えているが、こうした運用をしているところにその反応を尋ねると、概ねポジティブな感想が返ってくる。

現時点では物珍しさも強く作用しているとは思われるが、少なくとも日本では、アニメやSF、映画などでロボットという存在に対する認知度は十分広まっており、その働きぶりを「健気」「かわいい」という感覚で受け入れられる人の割合が、「仕事を機械に任せてけしからん」と感じる人よりも随分多いということなのだろう。ロボットは接客系ビジネスにおいても十分有効であると断言してしまっていいだろう。

Pepperの導入事例では、もちろん選りすぐった成功事例ということもあるだろうが、概ねポジティブな反応が返ってきている。一方で、店頭や店の片隅で俯いたまま電源も入れてもらえないPepperの姿もあちこちで散見するようになっており、具体的な計画性もなく、一時の話題性だけで導入したところでは持て余している例も多いように見受けられる。ロボットは強力なツールだが、単体ではやはり限界があり、効果的に利用するには業態に見合った用途と、その用途にあったシステムによるバックアップが必要になるということだろう。

ソフトバンクロボティクスでは、Pepperに独自の動きや対応をさせるための簡易プログラミングツール「Pepper Maker」などを発表しているほか、サービス、セールス、PRの各分野に役立つアプリも多数開発している。こうしたツール・アプリ類を活用し、いかに業態に向いたロボットの使い道を考えつくか。すでにロボットは単なる客寄せパンダではなく、活用期に向かって本格的に取り組みが必要な時期になっていくだろう。

Pepperの動きや会話パターン(シナリオ)を組み立てる「Pepper Maker」。ブラウザ上で動作し、Pepper単体でも設定ができる