高い周波数帯の活用で高速通信を実現

だが、LTEの100倍もの通信速度と1000倍もの容量を実現するのは決して容易ではない。3G、4Gの時はキラーとなる新技術の導入によって通信速度の向上が図られてきたが、5Gでは高速・大容量を実現する決定的な技術がなく、さまざまな技術や要素の組み合わせによって通信速度の高速化・大容量化を図ろうとしているのだ。

中でも大きな影響を与えると考えられるのが、新しい周波数帯の利用だ。現在の3Gや4Gに用いられている周波数帯は3GHzより下の帯域が多く用いられており、中でも1GHzより下の、遠くに飛びやすいとされる「プラチナバンド」と呼ばれる帯域が重宝される傾向にある。だが周波数が低い帯域は、既に携帯電話だけでなく、他の無線通信などにも用いられていることから、一層の高速・大容量通信を実現するには限界がある。

そこで5Gでは、新たにより上の帯域、具体的には6GHz以上、さらには20GHzを超える帯域の活用なども検討されている。周波数が高い帯域は他の通信などにあまり用いられておらず、高速・大容量通信を実現する上で必要な、広い帯域幅を確保できる。それゆえ高い周波数帯の活用が、5Gでは重要な鍵を握っているわけだ。

5Gでは一層の高速化を実現するため、6GHzや28GHzなど、従来使われていない、広い帯域幅を確保できる周波数帯の活用が検討されている

しかしながら電波は周波数が高いほど、建物の裏などに回り込みにくく、直進性が強いことから扱いづらいというのが定説だ。そこで5Gでは、高い周波数の電波を、プラチナバンドのように面的に射出して広いエリアをカバーするのではなく、特定の端末を狙って射出する「ビームフォーミング」という技術を用いることで、端末に電波を届ける仕組みを採用している。

NTTドコモと主要基地局ベンダーによる5Gの実証実験デモより。5~70GHzを超える高い周波数帯の電波を、ビームフォーミングによって端末に直接射出することで高速通信を実現

だがビームフォーミングでは、端末の動きを常に把握して追随する必要があるのに加え、隣り合う基地局と電波が直接重なり合うわけではないことから、移動中に接続する基地局を切り替える「ハンドオーバー」などの制御が、従来より難しくなるという課題を抱えている。そうした問題を、基地局間を協調するなどさまざまな技術を用いることで解消しようとしているのだ。