コスト削減依存の好業績は自らの首を絞めることに

だがコスト削減による好業績がいつまでも続くわけではない。確かにここ最近は環境変化がコスト削減要因となっていたが、逆に今後は環境変化によって投資コストを増やさざるを得ない状況を迎えつつあるからだ。

その1つが「5G」、つまり現在主流のLTEやLTE-Advancedといった通信方式の、次の世代となる通信方式の導入だ。5Gに関しては現在、標準化団体の「3GPP」で標準化が進められている最中だが、日本ではNTTドコモが、東京五輪を迎える2020年に5Gの一部要素を導入したサービスを提供する方針を示しているし、ソフトバンクも昨年から「5G Project」と銘打って、5Gでの採用が見込まれる技術を投入して通信環境を向上させる取り組みを進めている。

それゆえ今後、5Gに向けた取り組みは加速度的に進められると考えられ、そうなると減少傾向にあったインフラ投資コストは、再びアップすることになるだろう。5Gが導入されれば再び3社間で激しいインフラ競争が起きることも考えられ、競争が激しいほど投資コストは増大し、業績を落とす要因につながると考えられそうだ。

また総務省の実質0円禁止策によって実現した利益向上も、総務省が長期利用者などに還元することを求めていることから、あくまで一時的なものに過ぎないといえるだろう。実際KDDIは、昨年長期利用者向けのプログラム「au STAR」を開始して顧客還元の取り組みを強化しているが、2016年度の還元額は50億円程度だったものの、2017年度は数百億円規模になるとするとしている。各社の顧客還元は来年度から本格化すると見られ、今後還元額が急増することから利益を減らすことは確実な情勢だといえる。

KDDIは昨年より顧客還元プログラム「au STAR」を展開しており、既に600万会員を突破。顧客還元が本格化する来年度は、還元額が数百億円規模になるとしている

そしてもう1つ、積極的なコスト削減はそもそも社員の士気低下につながりかねないほか、3社の周辺でビジネスを展開する企業にとっては取引の減少や売上の低下をもたらし、不満や離反を生む要因となるなど、必ずしもプラスにつながるものではないことも忘れてはならない。コスト削減によって好業績を生むという現在の構図が続けば、コスト削減によって自らの首を絞めることにもなりかねないだけに、3社には純粋に売上・利益を増やすための新たな戦略も求められるところだ。