利点は固定・携帯のセット割による解約率低下
光ブロードバンドの回線契約が増えれば、それだけ月当たりの売上が増えることから、これらサービスの伸びが携帯大手の売上向上に大きく貢献していることは確かだろう。だが携帯各社にとって、光ブロードバンドサービスの存在は、携帯電話事業にもプラスの効果をもたらす存在でもあるのだ。
それを証明しているのが、光やケーブルテレビなどによる固定ブロードバンドを先行して展開してきたKDDIだ。KDDIは同社、もしくは提携する固定ブロードバンドサービスと、auの携帯電話サービスを一緒に契約する契約することで、携帯電話側の料金を割り引く「auスマートバリュー」を2012年より開始しているが、このサービスが携帯電話の解約防止に大きな効果を発揮したことから注目を集めたのだ。
というのも、固定ブロードバンドは携帯電話と異なり、一度敷設した後は入れ替えをするのが容易ではないことから、長期間継続的に利用される傾向が強い。それゆえKDDIは、固定・携帯のセット契約による割引を提供することで、当時番号ポータビリティによる競争激化で乗り換えが激しかった携帯電話ユーザーの繋ぎ止めに成功したわけだ。
そうしたことから他の2社も固定・携帯のセット割を展開したかったのだが、固定ブロードバンド回線を全国規模で敷設するには携帯電話事業以上の莫大なコストが必要で、それを実現できているのはNTT東西の「フレッツ光」くらいしかない。KDDIは自社が持つ光回線に加え、全国各地のケーブルテレビ事業者を味方につけることで、投資コストを抑えつつ広いエリアをカバーできたが、ケーブルテレビ事業者は地域による制約が多いため、先行された他社は同様の手法をとることが難しくなっていた。
KDDI以外の企業が全国的にセット割を展開する唯一の方法は、NTT東西の光回線を何らかの形で用いることだが、そもそもNTTグループとライバル企業が提携するのは難しい。また同じグループのNTTドコモも、電気通信事業法の禁止行為規制によってNTT東西と一体での営業ができないことから、やはり長い間、セット割は実現できなかったのである。
だが2015年、NTT東西がフレッツ光のネットワークを卸売りする「光コラボレーションモデル」を開始。これによって自社でネットワークを持たないソフトバンクのような企業が光ブロードバンドサービスを提供可能になったほか、NTTドコモも他社と同じ条件で回線の卸を受けることで、同様のサービス提供が可能となった。そこでようやく2社が、先行するKDDIに追いつくべく固定・携帯のセット割を推進して販売拡大を進めたことで、光ブロードバンドサービスが急速に伸びているわけだ。