決算を開示できなかった理由

東芝では、本来、2月14日に、2016年度第3四半期業績を発表する予定であったが、内部統制の不備を示唆する内部通報があり、この調査などに30日間を要すると判断。発表を1カ月先送りした。

元々午後4時から決算会見だったが、延期を受けてとりやめに。開場予定だった午後3時にはの延期の理由を聞きに、報道関係者が集まり会見場に通されたものの、延期理由を説明する会見が開催されるか未定の状態が2時間続く……。午後5時ごろになって、午後6時半から会見を開くと広報から知らされた。写真は午後4時半ごろ

だが、非監査の状態で、同社の見解に基づく見通しとして発表した第3四半期業績では、営業損益は前年同期比3128億円減の5447億円の赤字。その中には、原子力事業ののれん減損としてのマイナス7125億円を含む。また、当期純損益は205億円減の4999億円の赤字。そのうちのれん減損、WEC(ウェスチングハウス)繰延税金資産取り崩しなどで、マイナス6204億円。株主資本は5201億円減のマイナス1912億円と、債務超過になることを示した。

さらに、今回修正した2016年度通期の業績見通しでは、売上高は、11月8日公表値に比べて1200億円増の5兆5200億円としたものの、営業損益は5900億円減の4100億円の赤字、税引前損益は5800億円減の4500億円の赤字、当期純損益は5350億円減の3900億円の赤字とした。

2017年3月期の株主資本は4700億円減のマイナス1500億円。期末時点でも債務超過になることを示した。

これは資本対策前の数字であり、東芝では、今後の半導体事業の売却、また、ウェスチングハウスへの出資比率の引き下げ、他の保有資産の売却、金融機関からの協調融資などを進めることで、債務超過を回避する考えだ。ただし、「グループ会社をほかに売却することは考えていない」(綱川社長)とも語る。とはいえ、すでに家電事業やヘルスケア事業を売却しており、これ以上、他社が触手を伸ばしたい事業が見あたらないというのも事実だ。一時、売却が取りざたされたPC事業は自力での再生を目指しているが、市場が縮小するなかで、高い金額で売却するのは難しいだろう。

東芝は、東証から「特設注意市場銘柄」に指定されており、3月15日にも指定解除の判断を仰ぐことになっていた。

だが、今回の第3四半期報告書は、内部調査の結果をまとめた内部管理体制確認書とともに、3月15日以降に提出されることになっており、そこで、特設注意銘柄からの指定解除についても検討されることになる。しかし、現時点で期末における債務超過を見通しが示されているだけに、指定解除は極めて困難との見方もある。むしろ東証二部への変更さえ視野に入る。

さらに期末の債務超過は、上場廃止の可能性を、より現実味があるものにする。東証の規定でも、期末の債務超過に対しては厳しいルールを適用しており、1年以内に解消できない場合には、上場廃止の罰則も盛り込まれている。

東芝にとっては、まさに瀬戸際にまで追い込まれた状況にあり、半導体事業の主導権維持といった悠長なことは言っていられない事態に陥っているのだ。

第2四半期決算の時は前向きな空気が流れていたのに……