本田技研工業と米ゼネラル・モーターズ(GM)が、米国における燃料電池の合弁生産を決めた。なかなか進まない燃料電池自動車(FCV)の普及に追い風となりそうな今回の動き。合従連衡が進む業界において、孤立しているように見えたホンダの立ち位置も変わるかもしれない。

ホンダの立ち位置に変化は

更なる関係強化の契機に

ホンダとGMは2017年1月30日(米現地時間)、2020年をめどに米国で燃料電池システムの量産を行なう合弁会社を設立すると発表した。両社は総額8,500万ドル(約97億円)を折半出資し、合弁でミシガン州ブラウンストーン工場に製造施設を立ち上げ、新規に約100人を雇用するというものだ。

両社は2013年7月にFCVの技術提携を発表して以来、協業を進めてきた。今回は自動車業界初となる水素燃料電池システムの量産を米国で行なうことで、その提携関係を更に深化させることになった。

日本の自動車業界は、メーカーの構図がトヨタ自動車グループと日産自動車・三菱自動車連合に二分された観がある。ホンダの孤立が問われていただけに、今回のGMとの合弁が、両社の更なる関係強化に結びつくかが注目される。

一方で、今回のホンダ・GMの米国合弁主産の発表は、トランプ大統領の「米国に工場を、雇用拡大を」との主張や日米自動車貿易批判に対応し、ホンダとしては改めて、米国との関係強化に動いたともいえよう。

ホンダとGMは90年代後半からの付き合い

ホンダといえば、米国への工場進出は日本メーカーで最も早く決断(1980年)している。また、ホンダ内部でも「アメホン」と昔から呼ぶアメリカン・ホンダ・モーターは、自前で米国のホンダ販売網を築き上げた海外営業の花形であった。

ホンダの連結業績についていえば、同社はかつて、米国への利益依存度の高さから「ホンダの米国一本足打法」と揶揄されたこともあったほどだ。逆にいえば、それだけホンダは、米国で生産・販売両面での現地化をいち早く進めてきたのである。一時は、ホンダが日本の青山から本社を米国に移すという話が聞こえてきたこともある。

GMとの関係は、GMサイドがホンダのエンジン技術を高く評価したことで始まった。1999年にはパワートレーンの相互供給で提携。ホンダはGM「サターン」にV6エンジンを供給する一方で、当時はGMグループだったいすゞ自動車から欧州向けディーゼルエンジンの供給を受けたこともある。これ以来、ホンダとGMの関係は続いている。