「もの書き」に集中できる小説用機能

昨今は小説投稿サイトの充実や個人でも電子書籍を発刊できることから、小説を執筆する人が増えているようだ。この需要に注目したのか、「一太郎2017」は小説執筆用の機能を拡充している。

一太郎2017標準のファンクションキーセット(画面上)と、小説用ファンクションキーセット(画面下)

最初に紹介するのが「小説用ファンクションキーセット」。一太郎2017の全体を操作する機能ではなく、文章入力に特化した機能を各ファンクションキーに割り当てる。手をキーボードからマウスに持ち替えずに、必要な機能を最小限のステップで呼び出すために用意したそうだ。筆者はあまり使用していないが、ファンクションキーに慣れたユーザーにとっては、興味深い機能となるはずである。

もう1つは、3点リーダー「……」やダッシュ「――」といった約物(やくもの)を素早く入力する機能だ。前述した小説用ファンクションキーセットでは、「F8」キーがダッシュ、「F9」キーに3点リーダーが割り当てられているが、これらのキーアサインは「キーの割付」から自由にカスタマイズできる。そのほか、「ATOK 2017」の表現モードを利用し、登場人物の会話文となるカギ括弧内の話し言葉と通常の文章を素早く入力できるのも、小説用機能に含めていいだろう。

3点リーダーやダッシュをファンクションキーから入力した状態

ホームポジションを意識するのであれば、「キーの割付」からキーアサインを変更すると良い

「F7」キーに割り当てられた傍点追加機能。カーソルがある部分の文字に対して傍点を打つ

一太郎シリーズは以前から文章校正機能を備えているが、一太郎2017では文章校正機能の1つとして約物チェックが加わった。具体的には、3点リーダーやダッシュが偶数であるか、疑問符(?)や感嘆符(!)の後に空白が1文字挿入されているか、閉じ括弧の前(カギ括弧内の最後の文章)で句点を省略しているか、といった項目をチェックするものだ。

文章校正機能のチェック項目として加わった「約物チェック」タブ

これらは、DTPや電算写植時代に紙の雑誌、書籍を作る上では当たり前のルールだったが、確かにWeb上の文章では3点リーダーが1つだったり、「~だろうか?しかし~」といった表記が目に入る。些細なこととはいえ、文章の見た目として違和感を覚える方も多いだろう。このような背景から、このジャストシステムは本機能を実装したのだと思われる。

通常の文章校正実行時と同じく、問題箇所をハイライト表示で指摘

元々、一太郎シリーズは書類作成や文章作成などに特化したソフトウェアのため、新たに実装した小説用機能は既存機能の発展形という印象だ。しかし、それこそが、長年にわたって一太郎シリーズを使ってきた利用者に対して気づかいつつ、新たな利用シーンを増やそうとする意思の表れと感じる。