これまでソニーが営業利益5000億円を突破したのは、1997年度に、5257億円を計上したときの一度だけ。それだけでも高いハードルであることがわかるが、今回の下方修正によって、そのハードルは一段とあがったことになる。

実は、第2次中期経営計画を打ち出して以降、ソニーの前には次々と壁が立ちはだかっている。

当初は、デバイス分野の成長が、計画達成には重要な柱になるとしていたが、スマートフォンの需要鈍化に加えて、平成28年春の熊本地震の影響で、イメージセンサーなどを生産する熊本テクノロジーセンターが一部停止。デバイス事業だけでなく、デジカメやビデオなどのイメージング・プロダクツにも影響した。描いた成長戦略のブレーキを踏まざるを得ない状況を余儀なくされてきた。

そして、今回の映画分野での減損が、さらに追い打ちをかけたというわけだ。

では、どうやってその高いハードルに挑むのか。

赤字の半導体事業 黒字化への期待

吉田副社長は、「赤字の半導体事業をしっかりとターンアラウンドさせること、ゲーム&ネットワークサービス事業を成長させていくこと、そして収益の安定化が大切である」と語る。

半導体事業は、第3四半期累計で売上高は3.2%減の5720億円、営業損益が1086億円減の206億円の赤字のままだ。だが、第3四半期はモバイル機器向けイメージセンサーの販売数量が大幅に増加して、売上高は前年同期比16.9%増の2339億円と大幅な増収を記録。2016年通期の見通しは、売上高が600億円増の7700億円とした。営業損益も前回見通しに対して340億円改善。190億円の赤字まで圧縮する計画だ。

吉田副社長は、「昨年5月に、外販向け高機能カメラモジュール事業の中止を発表し、11月には中国工場を現地企業に譲渡。これにより、多額の損失を計上した。これは、大きな反省材料だと認識している」とする一方、「イメージセンサーは、2016年度上期まで低調だったが、第3四半期から中国メーカー向け拡販の効果や地震影響の減少、円安メリットもあり、収益性は回復傾向にある」とする。

市場変動が激しいことから、市場変化を慎重に見ていく必要もあり、半導体事業が再び成長の牽引役になるにはもう少し時間がかかりそうだ。その点では、2017年度の営業利益5000億円達成の強力なドライバーにはなり得ないだろうが、黒字化による上積みの貢献が期待されている。

PS周辺ビジネスの成長

2つめのゲーム&ネットワークサービス事業では、2017年1月に、プレイステーション4の累計出荷が5340万台に達したこと、これをベースに展開しているプレイステーションネットワークによるネットワークビジネスの貢献が注目されている。

実際、第3四半期には、ネットワークを通じた販売を含む、プレイステーション4向けソフトウェアが前年同期比40%増という成長をみせている。また、今回の会見では、2016年10月以降、品薄が続いているプレイステーションVRが「想定通りに売れ行きになっている」と発言。こうした成果により、第3四半期累計でのゲーム&ネットワークサービスの売上高は2.6%増の1兆2680億円、営業利益が295億円増の1131億円を達成。また、2016年度通期見通しは、売上高で500億円増の1兆6400億円へと上方修正した。営業利益は据え置き1350億円としたが、5000億円への達成に向けて、金融事業と並んで、最も貢献度が高い事業であることは間違いない。

3つのエレクトロニクス事業の収益性

そして、最後の「収益の安定化」という点では、スマートフォンにする「モバイル・コミュニケーション」、デジカメを中心としたる「イメージング・プロダクツ&ソリューション」、テレビを含む「ホームエンタテインメント&サウンド」という3つのエレクトロニクス事業が収益を高めていくことがポイントになろう。