こうした映画分野における減速ぶりについては、CEOを務めたマイケル・リントン氏が2004年にソニー・ピクチャーズに入社以降、13年間という長期に渡って経営トップとして君臨。ガバナンスに問題があったとの指摘もあり、会見でもそれに関する質問も飛んだ。リントン氏は、先頃、電撃的にソニー・エンタテインメントのCEOおよびソニー・ピクチャーズのCEOの辞任を発表したばかりだ。

吉田副社長は、「映画事業は蓄積された問題がある。それは、本質的に経営の問題であると認識している」と語り、「エレクトロニクス事業が低迷しているなかで、短期的な利益を追求してきた部分が否めない。スパイダーマンの商品化権をディズニーグループに売却したり、メディアネットワーク事業(中南米の有料テレビ放送事業をタイムワーナーに売却)を売却したりといったように、短期業績を作るために、将来のキャッシュフローを切り捨てた経緯があった。これがいまの収益力の弱さにつながっている」とする。

そして、「いまの経営陣が、腰を据えて建て直していくしかない」と語る。

吉田副社長は、建て直しに向けて、ソニーの平井一夫社長自らが陣頭指揮を執る姿勢を明らかにした。

平井社長自らが
映画建て直しの陣頭指揮を執る

映画は平井社長自ら建て直しへ

具体的には、平井社長自らが、映画事業の拠点がある米カリフォルニア州カルバーシティに第2オフィスを構え、映画を中心にエンタテインメント事業全体に深く関与。「ソニー・ピクチャーズの後任CEOの人選や、映画分野の経営体制の強化に優先度をあげて取り組んでいく」とする。リントン氏が今後半年間に渡って現在のポジションの残るとともに、平井社長は、ソニー・エンタテインメントの会長兼共同CEOに就任。リントン氏と連携して、ソニー・ピクチャーズエンタテインメント、ソニー・ミュージックエンタテインメント、ソニー/ATVミュージックパブリッシングといったエンタテインメント事業各社およびソニー・コーポレーション・オブ・アメリカの経営の監督にも携わることになる。

そして、もうひとつ強調したのが、「映画事業を売却する計画はない」という点だ。

減損を計上した映画製作およびテレビ番組制作を手がける事業プロダクション&ディストリビューション事業についても、「コンテンツ配信が多様化するなかで、良質なコンテンツを保有することと、作ることの価値が上昇している」とし、吉田副社長は、「映画分野は、将来の利益成長を見込んでおり、引き続きソニーにとって重要な事業と位置付けている」と述べた。

険しくなる経営計画達成への道のり

映画分野の減損によって、2016年度営業利益見通しを下方修正したソニーだが、これは中期経営計画で打ち出した目標を達成する上でも大きな課題を生むことになる。

ソニーは、平井社長体制における第二次中期経営計画を2015年度からスタート。2017年度に、連結営業利益5,000億円以上、ROE10%以上という数値目標を掲げている。

営業利益5000億円の目標には変更がないと話す

だが、今回の下方修正により、2016年度の営業利益見通しは2400億円。つまり、残り1年で営業利益を倍増にしなくてはならない状況に追い込まれたといえる。

吉田副社長は、「営業利益5000億円の目標には変更がない。チャレンジングな目標だが、達成に向けて全力をあげる」と語る。