ワガママなクルマ好きをうならせるコンセプトカー
当初は市販が前提ではなかったのに、発売してしまったコンセプトカーもある。ちょっと昔の例になるが、「ギア/いすゞ117スポルト」がそうだった。
カーデザインの巨匠、ジョルジェット・ジウジアーロがギアというカロッツェリアに在籍していた頃、ギアとつながりを持ち始めたいすゞ自動車は、スポーツカーのデザインを依頼した。1966年のジュネーブショーに展示したところ、複数の賞を受賞するほどの高評価。これを受けていすゞは市販化を決定し、ジウジアーロの協力を受け、2年後に「117クーペ」として発売したのだ。
実は筆者が所有しているルノー「アヴァンタイム」も、似たようなプロセスで生まれた。ルノーは昔からコンセプトカーを積極的に送り出してきたブランドのひとつで、その一環として1999年のジュネーブショーでアヴァンタイムを初公開。翌年は東京モーターショーにも展示されるなど、世界各地のモーターショーを巡るうちに、ミニバンをベースにクーペに仕立てた斬新な発想が反響を呼び、2001年にほぼそのままの形で市販されたのだ。
しかし残念ながら、いざ売り出してみると購入する人はごくわずかで、たった2年で約8,500台を作っただけで生産を終了してしまうという失敗作になってしまった。昨年のトヨタ・プリウスの販売台数の約30分の1と書けば、少なさが分かるだろう。
市販に結び付かないショーカーはケシカランと言いつつ、いざ市販してみると現実離れして買う気にならないという。クルマ好きってなんてワガママな人種なんだと思うかもしれないが、そういう人たちを満足させる夢のクルマが、コンセプトカーというものなのかもしれない。