WorkForce Enterpriseがインクジェット技術を活用することで、レーザー方式の複写機に比べて、構造がシンプルなことを訴求している。実際、レーザー方式は印刷する際に、帯電、露光、現像、転写、定着というプロセスを踏むが、インクジェット方式では、噴射するというシンプルなプロセスだけで済む。しかも、紙には接触しないで印刷が可能だ。こうしたシンプルな構造は、当然のことながらコストダウンにもつながる。

エプソンが今回の製品で設定した価格は、100ppm機でありながら、既存のレーザー方式の50ppmと同じ価格設定。性能が2倍でありながら、同等価格という言い方もできるが、その構造のシンプルさから、今回の価格設定をもとにすれば、レーザー方式には実現できない収益性の高さを実現しているのではないかと指摘する声もある。

今回の会見では、その点には具体的には言及しなかったが、「エプソンの収益性が強まる可能性がある。また、販売パートナーにもしっかりと利益をとってもらえる」(久保田事業部長)とコメント。シンプルな仕組みを背景としてコスト構造の優位性を活用しながら、そこで得られる利益を、パートナーに還元するといったことも可能になりそうだ。

今後、コストメリットの強みを、パートナー戦略や収益拡大にどう生かすか。コスト競争力がこの分野におけるエプソンの強みになるといえそうだ。

一方で、大容量インクタンクモデルの取り組みについても説明した。大容量インクタンクモデルは、2010年にインドネシアから市場投入した商品であり、現在、約150カ国で販売。エプソンが全世界で販売しているプリンタのうち、約4割を占めているという。今後のプリンティング事業における成長製品のひとつに位置づける考えだ。

「プリンタ市場は全体的に停滞しているが、エプソンは大容量インクタンクモデルの投入により、販売数量が拡大している。これにあわせて、インクの売り上げも拡大している。競合他社も参入してきたが、逆に認知が浸透し、需要が伸び、エプソンの大容量インクタンクの販売台数は着実に伸びている。

アジアではプリンタ市場全体の34%を大容量インクタンクが占めており、増加傾向にある。全世界のA4サイズプリンタ市場においては9%の構成比であり、2016年度第3四半期は、前年同期比で48%増という伸びをみせている。これからも、大容量インクタンクモデルの市場拡大のオポチュニティがあると考えている」(久保田事業部長)。

また、碓井稔社長は、長期ビジョン「Epson25」の基本姿勢について説明。「すべての事業領域において、独自のコアデバイスを作り上げ、文字通り核として、様々な商品やジャンルに応用する垂直統合モデルとし、これまでになかった価値を効率的に作り上げていくのが基本姿勢である。これを基本に、インクジェット、ビジュアル、ウェアラブル、ロボティクスの4つの領域に展開している。プリンティング領域においては、独創のマイクロピエゾ技術を磨き上げ、高い生産性と、高い環境性能を実現し、循環型社会に最適な環境を提供できる。オフィスにおいて期待を超えることが大切である」(碓井社長)。

コアデバイスの創出にあわせて、エプソンの研究開発力についても説明。インクジェット技術に関わる開発機能やオペレーション体制が、長野県塩尻市の広丘事業所の同一拠点内にあり、研究開発や意思決定、課題解決のスピードが速いこと、中長期的な持続的成長を果たす新製品や要素開発などに積極的に投資を行っていることに言及。

インクジェットプリンタ関連特許件数は、日本では5,800件、米国では3,660件、中国では1,527件に達し、他社を圧倒していることを示しながら、業界ナンバーワンの特許数を誇り、豊富な知財力を持つことが、同社の競争力の源泉にあることを強調してみせた。