WorkForce Enterprise LX-10000FおよびLX-7000Fでは、新開発のPrecision Coreラインヘッドを採用し、100ppm(1分間に100枚)という高速な印刷を実現した。碓井社長も自信をみせる。
「インクジェットは非接触型で、熱を使わず、シンプルな構造になっている。インクジェットはインクを噴出すれば印刷が済む。また、レーザー方式に比べて、低TCO、低消費電力、廃棄物が少ない、交換部品が少ない、故障しにくいという特徴を持つ。
インクジェット方式には、ピエゾ方式とサーマル方式があるが、エプソンのマイクロピエゾ方式は、非加熱のためヘッド自体の性能劣化がなく、インク種の制約が少ないという特徴がある。構造が複雑で製造の難易度が高いという点があるが、優れたノズル噴射能力と高いノズル解像度を実現し、小型ながら、高速印刷と高画質を両立できる。インクジェットの原理的な優位性と、Precision Coreが持つ現実的な強みが発揮できるのがPrecision Coreラインヘッドの特徴となる」(碓井社長)。
また、碓井社長は今後の計画として、Precision Coreの技術を継続的に磨き、常に高い顧客価値を提供。さらなる高密度化による画質向上や、シュリンク化によるコスト競争力の向上、ラインヘッド化による高速印刷と高画質の両立を進める姿勢を示した。久保田事業部長も異口同音に述べる。
「ここはまだスタート時点。これからも技術を発展させることで、100ppmを超えるところまで伸ばすことができると考えている。この可能性を現実のものにつなげていく。
高速ラインインクジェット複合機の投入により、エプソンのプリンタ事業は幅広い製品を供給する体制へと広がる。メカエンジンやコントローラ、GUIなどのプラットフォーム化による効率的な商品開発と、ヘッドの需要増や高密度化に向けた生産体制強化として、広丘事業所の新工場の建設、中期的な数量拡大に向けた完成品工場の拡張に向けて、インドネシア工場とフィリピン工場の増強、自社製ロボット導入などによる効率化を図る」(久保田事業部長)。
だが、複合機市場への参入は、パートナーとの連携が欠かせない。先行するキヤノンやリコー、富士ゼロックスは直系の販売網を持ち、それらの販社がシェアの拡大、維持につながっている。
セイコーエプソンは、直系販社としてエプソン販売を持つが、直販での実績は高くはない。そのため、新たな販売ルートの拡大が不可欠だ。エプソンは、2014年8月から「スマートチャージ方式」でオフィス市場に参入。これまでに約300社の販売パートナーを通じて全国に展開、保守サービス網も構築してきた。
今回のWorkForce Enterpriseに投入にあわせて、これらの販売パートナーのうち、上位販売パートナーを中心に協業体制を強化。これまでは、顧客からの要望にあわせて販売パートナーが動くという、いわば「受け身」の仕組みであったが、WorkForce Enterpriseでは、販売パートナー側からプッシュするような仕掛けに力を注ぐ。
「これまでは、提案先で競合した場合に、競合相手に対する次の提案として、スマートチャージを提案するなど、2番目製品の扱いに留まっていた。だが、WorkForce Enterpriseはオフィスのセンターを担う製品。これまでのような気持ちで売ることはできない。本気で扱ってもらえる販売パートナーと手を組む」とする。