同様に、すでにカーナビ事業の富士通テンをトヨタおよびデンソーに譲渡することを発表。このほど、ニフティのコンシューマ事業についても、ノジマに売却することを正式に発表した。

会見では、塚野CFOが、ニフティのコンシューマ事業売却について説明。「2016年10月以降、様々な候補先のなかから検討をしてきたが、事業や従業員の雇用、成長性の問題からノジマを選択した。ノジマの実店舗や営業力により、サービスやソリューションを広げていくことを期待したい」と語った。ここでも、「事業を強くするための選択」ということを強調してみせたが、裏を返せば、コア事業へのリソース集中策の一環であることは否めない。

このようにコンシューマ領域の事業を再編することで、富士通のコア事業をより鮮明にするという狙いもあるといえよう。

生産拠点の維持が交渉の山場

PC事業に関する富士通とレノボの検討内容については、両社とも明らかにはしないが、事業を強くするという観点からいえば、生産拠点の維持が重要な要素になっていることは明白だ。

富士通のPC生産は、富士通クライアントコンピューティングの傘下でノートPCを生産する島根県出雲市の島根富士通と、富士通の傘下でデスクトップPCを生産する福島県伊達市の富士通アイソテックが主要拠点となっているが、焦点になっているのは、富士通クライアントコンピューティング傘下の島根富士通を、レノボとの事業統合後も維持できるかどうかという点だろう。

島根富士通を維持できるかが焦点だろう

レノボグループには、すでにNECパーソナルコンピュータがあり、同社が持つ山形県米沢市の米沢事業場では、NECブランドのPC生産だけでなく、レノボのThinkPadの一部生産や、レノボのサーバー製品のコンフィグレーションなどを行い、連携を強化している。

島根富士通を加えると、国内における生産体制は過剰ともいえる状況になり、生産拠点の再編も検討材料にあがると見られる。

富士通クライアントコンピューティングの齋藤社長は、「富士通は、要望に応じて、オーダーメイドで製造や設計が可能であり、顧客が望むリードタイムで、製品を提供することができる」と語り、ここに富士通のPC事業の特徴があることを示す。

富士通クライアントコンピューティングの齋藤邦彰社長

具体的には、生命保険会社向けに特化したカスタマイズモデルを製品化。教育分野向けにも現場の要求を反映し、カスタマイズしたタブレットを製品化している。

「顧客の細かい要求に応えた製品を投入できるのは、自前の設計、開発、工場があるからこそ」と、齋藤社長。実際にその成果があがっており、生命保険向け端末市場における富士通のシェアは80%。文教市場におけるWindowsタブレットの導入シェアでも86%という圧倒的なシェアを獲得している。

「工場がないと我々の強みがなくなる。富士通のPC事業の方針が維持できない」と齋藤社長は言い切る。

いよいよ山場を迎える段階に入るレノボとの交渉のなかで、富士通のPC事業の強みを維持する形で決着がつくのか。成り行きが注目される。