それは、富士通の田中達也社長が、任期中の目標として掲げる営業利益率10%の達成に向けては、収益性の悪いPC事業の分離が不可避と考えているからだ。
営業利益率10%達成のカギ
2016年度第3四半期累計での富士通全体の営業利益率は2.0%。目標とする10%からは遥かに及ばない。PCや携帯電話を含むユビキタスソリューションの営業利益率は3.8%と全社水準を上回っているが、これはデバイスソリューションが、1.1%と全社営業利益率の足を引っ張っているのが要因であり、富士通がコア事業と位置づけるテクノロジーソリューションは4.8%という水準にある。そして、テクノロジーソリューションを構成するシステムプラットフォームは6.4%の営業利益率に達している。PC事業を含むユビキタスソリューションとの差がある。
富士通のPC事業については、前年度に100億円を超える赤字を計上していたが、2016年2月に、富士通クライアントコンピューティングに分社化して以降、体質改善を進め、今回の決算でも、「開発費を中心とする費用の効率化、円高によるドル建て購入部材のコストダウン効果があった」として、黒字を維持した模様だ。だが、塚野CFOは、「第3四半期のPCの売上高はほぼ前年並。国内は法人向けに伸張して増収したが、海外は為替影響もあり、減収となった」と発言。さらに、「第4四半期の計画値は、保守的な数字にしている。Windows 7の販売終息通知の影響で、法人需要が上期に進んだことの反動、部材調達価格がドルベースで上昇し始めていること、新機種投入を中心に開発投資が増加することなどの懸念材料が影響する」と説明。今後の収益確保には不安を残すコメントをしている。
これは携帯電話事業も同じだ。
第3四半期の携帯電話事業は、「スマートフォン市場の成長鈍化の影響を受けた」とコメント。PCおよび携帯電話の売上高が前年同期比6.9%減の4447億円と減収となっている。塚野CFOは、「携帯電話事業については、様々な策を検討しているが、現時点で話ができるレベルのものはない」と述べたが、やはり事業譲渡なども検討材料にあがっている模様だ。
このように、利益率が低く、市場の影響を受ける不確定要素が多いPC事業および携帯電話事業を、富士通本体から切り離すことが、営業利益率10%を達成するための近道となる。