今までの「松井恵理子」とは違う一面

――松井さんの想いが詰まった今回のアルバム。どのような楽曲が収録されているのでしょうか?

先ほどお話した通り、バリエーションに富んだ楽曲が収録されています。今まで私が見せてこなかった様々な一面も見られるんじゃないかな。

――では、そんなアルバムに収録されている楽曲についてお伺いできればと思います。まずはアルバム1曲目の「ワスレモノ」。この曲をアルバムのトップに持ってこられた理由は?

インパクトですね。私が今まで演じさせていただいたキャラクターって、テンションの高い子や可愛らしい子が多く、キャラクターソングもそういう曲をたくさん歌ってきました。でも「ワスレモノ」はそのどれとも違ったパンチのある、濃い曲に仕上がっています。一曲目にして早速、今までの「松井恵理子」とは違う一面が出ていると思います(笑)。

――確かに、今までのイメージにはない曲でした! それに対して2曲目の「G.I.R.L.」は可愛らしい、今までの声優活動でも歌われてきた曲にも近いように感じます。

そうですね。私が今まで声優活動を通じて歌ってきたものと一番テイストが近い曲です。ライブでも盛り上がれそうで、皆さんと一緒に楽しめる曲になったのではないかなと思います。

――ポップな曲で、コールなどでも盛り上がれそうです。続く3曲目「理想ラビリンス」は、これまたガラッと雰囲気が変わりピアノなどのサウンドが印象的な曲ですね。

そうですね、私としてはけっこう挑戦したなと思う曲です。今まではこんなに脱力して歌ったことがほとんどなかったので、いかに引き算して歌うのかがテーマでした。また、歌詞には現状をどうしたらいいか分からないという、つらい気持ちがこもっているのですが、それをあまり重く受け止められないよう、肩の力を抜いた感じで歌わせていただきました。

――最初に曲を聴いたときは、何かのアニメで劇中歌に使われそうな曲だなと思いました。

私は「歌手のaikoさんっぽい」と感じて、すごく気分が上がりました! aikoさんがすごく好きなので(笑)。

――その後に続く4曲目は「デッサン」。この曲はアニメ『ナゾトキネ』の劇中歌で、本アルバムの中でも最初に公開された曲ですね。

はい、アルバムの真ん中くらいに持ってきているのはこの曲を大事にしたかったからです。本アルバムに収録される曲も実は「デッサン」を中心に決まっていったんですよ。「デッサン」は「にじようび。」が発売する前に、本アルバムのプロデュースをしてくださった近藤薫さんに作っていただいた曲なんです。

もし本当にデビューが決まったらこういう曲はどう?という感じでサンプルの曲をいただいたのですが、それがしっくりきて! その場で「これ、最高です、こういう歌が歌いたかった」と言ったくらいです(笑)。

――そんな経緯が。

いざデビューが決まったときに、やっぱり「デッサン」は入れたいとお願いしたら、近藤さんがフルバージョンを作ってくださったんですよ。

――松井さんにとって、「デッサン」は非常に思い入れがある曲なのですね。本アルバムの初回生産限定盤には「デッサン」のMVも付くそうですが、こちらはどのような仕上がりになっていますか?

普段の声優活動でお見せしている私の姿って、割とテンションが高いことが多いと思うのですが、MVの私はすごく清純です(笑)。陽だまりのなかにいる感じで、真っ白なところから物語を作っていく、というイメージのMVになっています。今までにない、清浄な空気を持った私が見られるんじゃないですかね(笑)

――清浄な空気!

はい、あははははは(笑)!!

あふれんばかりのアニメと郷土への愛

――「デッサン」の次は5曲目「ココニアルモノ」。この曲は千綿偉巧さんが作詞・作曲された、メッセージ性の強い楽曲ですね。

そう、そうなんです! 私の大好きなアニメ『金色のガッシュベル!!』のOPテーマである「カサブタ」を制作された千綿さんに曲を書き下ろしていただきました。私はもうそれだけでテンションが上がって!!

――「カサブタ」、いい曲ですよね。

はい! 本当にいい曲なんですよ!! この曲はデモの段階からアニメのOPでしょう! という印象が強かったです。あとは青い海や青い背景が頭にぼんやり浮かんできたので、そのイメージを大切にして歌わせていただきました。

――松井さんが感じられたイメージをどう歌で表現しているのか、改めてアルバムを聴いてみたいと思います。続く6曲目の「Tsubaki」はこれまたガラッと雰囲気の違う曲です。

この曲、デモテープの段階では男性の方が仮歌を歌っていらっしゃったんですよ。「Tsubaki」は悲しい・切ない歌詞なのですが、デモテープではすごく力強く歌われていて。それが非常に胸に響いたので、私もそれを踏襲し歌わせていただきました。

――仮歌で男性の方が歌われていたのを踏襲し出来上がったんですね。今回のアルバム全編を通じて気になっていたのですが、歌詞で「僕」という言葉を使っている曲が結構ありますよね。「Tsubaki」もその中の一曲ですが、こういうのは意図的なものだったのでしょうか?

確かに、「僕」というワードが入っている歌がたくさんありますね。でも私が特別オーダーしたという訳ではないんです。ただ、偶然なことに私自身が一人称を「僕」と使う曲を歌われる女性アーティストの方が好きで。例えば宇多田ヒカルさんとか。逆も然りで、男性の方が女性目線で歌っている曲も好きです。こういう歌詞の曲はキャラクターソングではなかなか歌えないので、楽しくレコーディングさせていただきました。

――確かにキャラクターソングではあまりない表現方法かもしれないです。対する7曲目の「子猫のRuby」は特に一人称が出てこない、ストーリー調の曲ですね。

可愛らしくて、優しい雰囲気が漂っている曲なので鼻歌を歌ったり、独り言をつぶやいたりするイメージで収録しました。この曲がアルバムのコンセプトである休日感を一番感じでもらえるんじゃないかな。

――続く「じゃんだらりん」はタイトルも非常にキャッチ―な曲です。ラジオなどでもお話されていましたが、これは三河弁の言い回しをくっつけた言葉なんですよね?

そうなんですよ! 何か特別なエピソードがあるわけではないのですが、私、なぜか郷土愛が強くって。

――ブログのタイトルも「じゃんだらりん」が使われていますもんね。

この曲は、私と同じ愛知県出身の近藤さんから、「じゃんだらりん」というワードを使った曲を作りませんかとご提案いただいたものなんです。「じゃんだらりん」は万人に使えるワードじゃないから、キャッチーだと思うし語感もいいからということで。それで是非と私からもお願いしたのですが、一つだけ要望をお伝えしました。

――どのようなご要望を?

「愛」と「知」というワードをどうしても入れたかったんです。その意向を近藤さんがくみ取ってくださり、「愛を知って 知った愛が 巡り巡り 笑顔になる」という素敵な詞を書いてくださいました。この歌詞を通じて、三河を伝えていけるのが嬉しくもあります。