個人的には、全てのiPhoneを米国内で作る必要はないと思う。米国向けのiPhoneを米国内で作る、ということで良いだろう。ただし米国内のiPhoneの価格が上昇しても、他国に影響を与えないでくれたら、というのが本音だが。

米国が関税の障壁を打ち立てたら、世界中が同調して、壁だらけになってしまうかもしれない。もしかしたら欧州連合も同じようなことを言い始める可能性があるし、その際にはEU離脱を行う英国が鍵になる可能性もある。

そういった状況も踏まえ、トランプ大統領との駆け引きは、筆者が考える、今最も面白いAppleに関する話題だ。もちろん次のiPhoneやiPadも気になるが、それ以上だと言える。あるいは、次のiPhoneで使われるパーツや機能、そして価格がどのようになるのか、近い将来関係してくる話でもあるからだ。

トランプ氏が大統領に就任してから、今現在見ているスケジュールでAppleが何らかの発表をする機会は、1月末に行われる2017年第1四半期決算のカンファレンスコールと、(昨年通りであれば)iPadがアップデートされるであろう3月末のプレスイベントだ。もちろんそれ以外のトピックとして、別に発表を行うかもしれない。

保護主義に走る世界と、グローバル化、フラット化によって富を得る仕組みを構築したテクノロジー企業。その駆け引きの分かりやすい指針となるAppleがどのように動くのか。今後も注目していきたい。

松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura