トランプ大統領は当選前から、Appleを、FBIの操作の問題、そして米国内での雇用の問題などで、たびたびやり玉にあげてきた。米国で時価総額トップの企業であるAppleに、製品を米国内で作らせることは、最も分かりやすいゴールだ、というわけだ。ただ、自動車とスマートフォンでは、おかれている状況が違う。自動車は米国のブランドがまだまだ存在しているが、米国内でスマートフォンを製造している主要メーカーは存在しないのだ。そもそも、世界のスマートフォンメーカーで米国企業はAppleだけになってしまった。中国企業、韓国企業、もしくは親会社が中国企業、というメーカーしか残っていない(IDCによる資料)。その中でAppleは、この産業の9割の利益を占める存在となっている。
Appleが自社製品を米国生産に切り替えることにメリットを感じているとは考えにくい。それよりは、海外で低コストで生産できるという恩恵を受け、高い利益率を維持しながら、ハードウェアの製造からだんだんとサービス部門による継続的な収益の拡大を目指すほうが良いに決まっている。
iPhoneの製造とアプリビジネスには、その産業に携わるための労働力に違いがある。特に後者には、コンピュータサイエンスの知識や、多くの場合大学卒業の学位が必要となり、万人が労働力としてアクセスできる産業とは言えないのだ。
ここに、シリコンバレーとトランプ氏との温度差を見出すことができる。