1月20日、ドナルド・トランプ氏がアメリカ大統領に就任した。大統領選挙を通じてテクノロジー業界で「トランプ支持者」を見つけることは難しく、PayPalの創業者で現在Facebookの取締役を務めるピーター・ティール氏以外に、ビッグネームを見つけることはできなかった。そんな状況下、昨年末、ニューヨークのトランプタワーでテクノロジー企業のトップがトランプ氏との会談を行い、意見交換を行った。もちろん、AppleのTim Cook氏も同席し、STEM教育に関して話したことが伝わってきた。
8年間のバラク・オバマ大統領の時代は、スマートフォンが爆発的に普及した期間と重なる。Apple、Googleの2つの米国企業が市場と技術の進歩、ビジネスモデルの構築を主導し、またアプリを中心とした新しい経済を生み出すことに成功した。
アプリのエコシステムは、ボーダーレスな経済の実現でもあった。例えば、日本人が100円でアプリを発売し、それが1週間の間に、世界中の人々10万人がダウンロードしたら何が起きるか。その開発者には、700万円が手に入る。そしてAppleもしくはGoogleに300万円が入る。今まで、世界中の人にアプリを販売するプラットホームはなかったし、日本国内ですら、100円のアプリを販売する方法はなかった。そもそも、そのアプリが動く世界共通のOSがなかったのだ。オバマ時代、シリコンバレーは世界とより密接につながり、富を集める仕組みを構築しやすくした。
しかし、こうした理想的な経済環境は、停滞するかもしれない。トランプ大統領は、これまでの発言からも、保護主義的な政策を採っていくと考えられている。例えば自動車メーカーについては、フォードに対して、メキシコ工場建設の計画を思いとどまらせた。トヨタについても同様で、米国への1兆円の投資計画を引き出した。そして今度はドイツのフォルクスワーゲンに矛先を向けている。
その武器は、製品が国境を越えて入ってくるときに課す税金だ。米国外で生産された製品に対して課税することで、製品の価格が上昇し、その企業の競争力が削がれる。米国内で生産する製品が相対的に競争力が高まり、雇用や投資が米国内に集まるようになる。これが狙いだ。