―― ヘッドフォン事業の成長はどうか。

高木氏「オーディオ事業では、3つの成長領域として、ヘッドフォン、サウンドバー、ワイヤレススピーカーを軸に展開していく。そのなかで、最も力を入れる領域がヘッドフォン。開発リソースに関しても、販売戦略においても、ヘッドフォンに力を入れている。

方向性としては、ハイレゾを軸にした高音質を実現しながら、ワイヤレス、ノイズキャンセリングといった高付加価値につながる機能を充実させていく。ワイヤレス、ノイズキャンセリング機能を搭載しても、高音質が実現できない製品はやりたくない。ハイレゾが第一であり、そこに業界最高レベルのノイズキャンセルと、安定したワイヤレス性能を組み合わせることが、ソニーのヘッドフォンづくりの方向性である。

ノイズキャンセリング機能搭載ワイヤレスヘッドフォン「MDR-1000X」

ノイズキャンセリング機能搭載ワイヤレスヘッドフォン「MDR-1000X」は、10年来、継続的に技術開発を進めてきたノイズキャンセンリング機能を搭載しており、そこに、こだわりのデザイン、材質、機構を組み合わせることで実現したものだ。

ようやく業界最高レベルのモデルができた。当初の予定より発売時期を半年先に伸ばしたが、満を持して投入できたと考えている。これを軸にして、インイヤータイプの左右独立ワイヤレス型、ネックバント対応など、高音質でありながら、様々なニーズに対応した製品をシリーズ化していきたい。

今回のCES 2017でも試作展示をしているが、これらは、MDR-1000Xの延長線上で開発しているものであり、それほど遠くない時期に商品化しなくてはいけないと考えている。また、iPhone 7にイヤフォンジャックがなくなったことで、ヘッドフォンのワイヤレス化を加速している。全体がワイヤレスの方向に流れている。

ワイヤレスでも、安定して高品位な音が出せることが一般化してきたこと、ジャックがなくなることで、スマホやオーディオ機器の防水対応が容易になったり、薄くできたりというメリットもある。ソニーは、こうした機器に対して、最も簡単に接続できるヘッドフォンとして提案していくことが大切だと考えている」

参考展示されたインイヤータイプの左右独立ワイヤレス型イヤフォン

同じく試作品を参考展示したネックバント対応イヤフォン

―― ソニーからは、しばらくスピーカーの新製品が出ていないが。

高木氏「ソニーは、本当にスピーカーの開発をやっているのかという声もいただく。製品発表はないが、開発は粛々と続けている。スピーカーは、毎年出すような商品カテゴリーではないが、ハイレゾをきちっと世に問うというところに尽力しており、2016年昨年には、ハイレゾ対応のスピーカーを出している。

このシリーズを、今後、どう発展させるのかということを常に検討している。スピーカーは技術改革のスピードが遅いが、ノウハウの固まりのようなものであり、ノウハウを蓄積することが重要なカテゴリーである。真摯に開発を続け、市場の状況、自社の状況を見ながら、商品化のタイミングを判断していく」