―― 今後も、ソニー自らはパネルの生産はしないのか。
高木氏「パネルの生産は自社ではやらない。パネルは調達する。これは有機ELに留まらず、液晶パネルでも同様だ。パネルはデバイスだと思っており、そこにどうスパイスを利かせるか、どう料理するかが大切。いわば、素材を買ってきて、料理をする料理人みたいなもの。どう料理するかがノウハウであり、これが差異化の源泉である。
ソニーは、パネル以外の領域でなにができるのかということを、ずっと考えてきた。液晶テレビでは、バックライトをどう光らせるか、独自の画像エンジンを使って、画像をどう映すかというところに専念してきた。むしろ、パネルを開発しなかったからこそ、画像エンジンの開発に、すべてのリソースと発想を集中できた面はあっただろう。
パネルも一緒に開発していたら、ここまでの『画』は出せなかったかもしれない。エンジニアが、パネル以外のところで、どうやってソニーのユニークさを出すのか、どう差異化するのか、どう付加価値を積み重ねていけるのか、ということを真剣に考えてきたことの成果といえる。
サムスンのQLEDも使えるものだと判断したら、採用を検討する可能性もある。それぞれのパネルの良さをどう生かしたらいいのかを考えていくことになる。だが、性能、コストといった観点で、いまはまだ候補にあがるレベルではない。
ただ、2017年においては、ソニーは、有機ELパネルを採用した1年であったといえるが、もしかしたら、数年後には有機ELテレビをやめているかもしれない。ソニーは、デバイスを選んでいる立場であり、もっといいデバイスがあれば、それに切り替えて、ソニーのテレビとして一番いい画を、顧客に提供していくことになる。それが、会社としての社会貢献。ソニーらしい高品位な画を、どのデバイスを使えば出せるかを考えていく上で、今回、有機ELパネルを選択したにすぎない」