本連載でも採り上げたが、2016年のウェアラブル市場は「期待外れ」という評価が強い
このカテゴリを代表するApple Watch、FitBitが揃って低調で、両者が重きを置いているアクティビティ機能によるニーズの掘り起こしに限界が来ていることを意味している、と解釈できる。
前回のApple TVの記事でも触れたが、CESのトレンドはAmazon Echoであり、人工知能を声でコントロールする新しいコンピューティングのスタイルだ。
Apple WatchやAndroid Wear、あるいはFitBitがPebbleの資産を活かして、声と人工知能のトレンドに入り込んでいく可能性を模索することは、自然なことではないか、と考えられる。ただしそれもプラットホーム的な位置づけであって、デバイスとプラットホームの上で何をするのか、というアプリの部分が重要になってくる。
筆者は少なからず、ウェアラブルデバイスに、スマートフォンの次の役割を期待している。例えばAndroid Wearがサポートするように、LTE通信機能によって、単独のVoIPやデータ通信が可能になっていくといった風に。バッテリー持続時間の劇的な向上が図られれば、スマートフォンの代わりを果たすポテンシャルを大いに秘める存在なのだ。
そうした未来像について、Appleが率先して進めるとは考えにくい。少なくとも、iPhoneがAppleのビジネスの中心であるならば、Apple Watchはずっと、iPhoneのお供以上の存在にはならないからである。それだけに、AppleがApple Watchにどのようなアプリの可能性を見出すかは、大きな責任となっている。もちろん、iPhoneやiPadと同様、アプリ開発者のアイディアに頼ることになるが、それをいかに素早くサポートするかだ。
開発者会議は今年も6月に開催されるだろう。それまでウェアラブル市場が今の状態で保たれているかどうかは、まだ分からない。
松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura