キラーアプリの発見が課題
2016年9月に登場したApple Watch Series 2は、デザインは同じだったが、より高速に動作するプロセッサにGPS、防水機能を備え、ナイキとのコラボレーションも実現した。
どれも、運動計測としての性能を強化し、フィットネスバンドに追いつこうとしている。しかし、価格、バッテリー持続時間、それに起因する睡眠計測への対応の難しさなど、埋められない溝が存在する。
ウェアラブルは引き続き、フィットネスバンドが市場を牽引していくことになるが、その理由は、デバイスを購入し身につける動機がより明確であることだ。健康的に生活しようとすることは、現代の人類にとって共通のテーマで、否定することは難しい。
逆にスマートウォッチには、フィットネス以上の強い動機が存在するかといわれると、現状は「ない」といえる。Apple Watchですら、登場後20カ月たってもまだ難しいのだ。ただ、筆者は明るい兆しを10月25日からの1カ月間につかむことができた。それは決済機能だ。
Apple Watch Series 2の日本向けモデルにはFelicaが内蔵されており、10月25日からスタートしたApple Payを設定することで、Suicaを利用できるようになる。東京で1カ月過ごす中で、Apple WatchとSuicaの組み合わせではじめて、「フィットネス以外のキラーアプリを見つけた」という感想を持った。改札、コンビニ、タクシー、コインロッカーなど、あらゆるところで手首をかざすだけでよい快適さは、Apple Watchを東京で身につける強い動機になると感じた。
しかし、筆者が住んでいるサンフランシスコに戻ってくると、再びフィットネス機能中心の活用になってしまった。つまり、スマートウォッチにとって決済機能はキラーだが、それがキラーアプリとしての役割を果たすには、街のインフラの普及が必要である、ということだ。
サンフランシスコですら、Apple Payで鉄道に乗ることはできないし、そもそも買い物をするにも、身近なスーパーやカフェでのApple Pay利用はまだできないからだ。