大手からベンチャーまで、幅広い企業が導入するLPWA
LPWAの代表的な通信規格の1つとして挙げられるのが「NB-IoT」である。NB-IoTは、既存の携帯電話キャリアが展開するLTEを、IoT向けに低速だが低コスト・省電力で提供できるようにしたもので、2016年に標準化が完了したばかりの規格でもある。
NB-IoTはあくまでLTEの延長線上にあるため、既存の携帯電話キャリアが導入しやすい方式でもあり、採用するのも大手キャリアが主だ。実際、日本でもNTTドコモやKDDI、ソフトバンクがNB-IoTの導入に向けさまざまな取り組みを進めている。
例えばソフトバンクは、2016年11月にNB-IoTの屋外実証実験を実施。NB-IoTのモジュールを搭載したセンサーを駐車場に設置し、駐車状況や課金などを管理する「スマートパーキング」のデモを報道陣に公開している。
だが、LPWAの通信規格はNB-IoTだけではない。LTEのインフラを持たない企業が、他の通信規格を用いてIoT向けのネットワークを提供しようという動きも、2016年にはいくつか起きている。
そのうちの1つが「SIGFOX」である。SIGFOXは、フランスのシグフォックス社が2012年より提供するLPWAの草分け的存在であり、免許不要で利用できる920MHz帯を活用して低価格・省電力で、なおかつ広いエリアをカバーするネットワークを提供するというものだ。
そして2016年11月には、京セラコミュニケーションシステムが日本で独占契約を結び、SIGFOXのネットワークを同社が日本で展開することを発表している。同社はMVNOとして法人向けに通信サービスも提供しているほか、企業向けのICTソリューションなども提供している。そうしたノウハウを生かしてSIGFOXのネットワークを展開し、IoT機器への導入を進めるとしている。
もう1つ、LPWAの通信規格として注目されているのが、2015年より展開されている「LoRaWAN」だ。LoRaWANもSIGFOXと同様、920MHz帯を用いて広いエリアをカバーするIoT向けの通信規格だが、SIGFOXはシグフォックスが独占提供しているのに対し、LoRaWANは複数企業が参加して立ち上げた「LoRaアライアンス」が提唱する通信規格であるため、オープン性が高く多くの企業が導入しやすいのが特徴となっている。
それゆえLoRaWANを展開する企業は比較的幅が広い。例えばMVNOとしてIoT向けの無線ネットワークを手掛けるベンチャー企業のソラコムが、今年LoRaWANを展開するM2B通信企画という企業に出資してLoRaWANの展開に力を入れている。また固定通信のNTT西日本もLoRaWANの実証実験を進めており、規模を問わず多くの企業がLoRaWANを導入、あるいは導入に向けた準備を進めているようだ。