AIがモバイルデバイスのあり方を変えるか

では今後、モバイルにAIが入り込むことで、どのような変化が起きるのだろうか。そこで浮かんでくるのは「音声操作」と「ワイヤレス」の2つである。

グーグルがPixelをデモする際も、タッチパネル操作で文字を入力するのではなく、声で話しかけることで指示を出していたのが印象的だった。このことはAIの導入によって、スマートフォンの操作がタッチから、音声へと大きく変化する可能性を示している。

そもそも人間にとって、キーボードやマウスを使ったり、ディスプレイをタッチして操作したりすることは、本来自然な行動ではない。だがこれまでは、コンピューターの性能が低かったことから、コンピューターに指示を出すため、人間の側がコンピューターに合わせる必要があったのだ。

しかしながらAIが入り込むことで、コンピューターが人間の言葉を理解できるようになれば、人間にとって最も自然な"話す"という行動で指示ができるようになる。それゆえモバイルにAIが入り込むことで、スマートフォンの利用スタイルも音声操作へと、大きく変化していくと考えられる。

また音声操作の利用が高まっていけば、スマートフォンを使って情報を引き出す手段も"対話"が主体ととなっていく可能性が高い。大抵の操作が対話で済むのであれば、そもそもスマートフォンの画面を見る必要性も少なくなっていくだろうし、その時重要になってくるのが、スマートフォンとの対話をより手軽にする、ワイヤレスで音声操作するデバイスとなるのではないだろうか。

同様のデバイスとしては、最近発売されたソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia Ear」などが挙げられる。スマートフォンにAIが本格的に入ってくるようになれば、今後Xperia Earのようなデバイスの人気が高まってくるだろう。そして今後、ハードやネットワークが一層進化していけば、将来的にはスマートフォンが不要になり、Xperia Earのようなデバイスだけがあれば十分事足りるという時代がやって来るかもしれない。

11月18日に発売された「Xperia Ear」。耳に装着して対話しながら情報を得る音声アシスタントだが、AIの進化で今後はこうしたデバイスが大きく広まる可能性がある

無論、そうした時代が訪れるとしても、2017年より先のことになるだろう。だが2017年には、モバイルにAIが本格的に入り込んでいくことで、現在のスマートフォンを中心としたモバイルのあり方を大きく変える年になる可能性は、十分考え得るのではないだろうか。