2016年は人工知能(AI)が大きな注目を集め、AIを採用したサービスやデバイスが急増した1年だった。中でもメッセンジャーアプリのチャットボットや、グーグルの新スマートフォン「Pixel」などのように、モバイルの分野でAIを採用する動きは急速に広まっている。この流れは2017年も続くと見られるが、AIでモバイルのあり方は大きく変わるだろうか。

スマートフォンに続々導入されるAIの技術

2016年、IT業界で注目を集めたものの1つに人工知能(AI)がある。AIといえば、2015年10月にグーグル傘下のグーグル・ディープマインドが開発した「AlphaGo」が、囲碁で人間のプロ棋士を破ったことで大きな話題となったが、2016年に入ってからは、ディープラーニング(深層学習)を取り入れたAIが実際のサービスに取り入れられ、実用化が急速に進められたことが注目されている。

AIはその汎用性の高さから、ソフトバンクロボティクスの「Pepper」に代表されるロボットの分野や、アマゾンが米国で展開する「Amazon Echo」に代表されるホームエレクトロニクス分野など、幅広い分野への導入が進められている。そうした中でもAIの導入が積極的に進められた分野の1つとして挙げられるのが、モバイルである。

モバイルにおけるAIといえば、アップルのiOS向け音声アシスタントサービス「Siri」などが以前より知られているが、2016年はそのライバルとなるAndroidを提供するグーグルが、モバイルに向けたAIの導入を積極化してきた。実際グーグルは、2016年5月の開発者向けイベント「Google I/O」で、AIを活用した音声アシスタントサービス「Googleアシスタント」を発表。さらに10月には、そのGoogleアシスタントを全面的に取り入れたスマートフォン「Pixel」「Pixel XL」を米国などで発売し、スマートフォンのAI導入を本格化している。

グーグルはGoogleアシスタントを前面に取り入れた「Pixel」「Pixel XL」を、10月に米国などで発売開始。日本での発売は未定だ(画像:Google Official Blogより)

そしてもう1つ、モバイルとAIに関する出来事として注目されたのが「チャットボット」の人気の高まりだ。チャットボットは「LINE」などのメッセンジャーアプリ上で動作する対話プログラムの総称だが、このチャットボットにAIを活用することで、チャットボットと会話することで必要な情報を得たり、買い物やレストランの予約などができたりするようになることから、高い関心を集めている。

中でも注目されたチャットボットが、マイクロソフトがLINEなどで展開している"女子高生AI"こと「りんな」である。りんなは2015年にLINE上で提供が開始された、娯楽要素の強いAIを採用したチャットボットだが、比較的スムーズで、なおかつユニークな会話が楽しめることなどからファンが急増。書籍が発売されたり、リアルでのイベントやサイン会が実施されたりするなどして、急速に人気を高めている。

"女子高生AI"「りんな」は、さまざまな会話が楽しめることが人気に。2016年の東京ゲームショウでは専用のブースも設けられるなど、リアルイベントにも進出している