KDDIのビッグローブ買収がMVNOの再編に?

そしてMVNO同士の競争が高まれば高まるほど、実はキャリアの存在が注目されるようになってくる。一見すると、MVNOはキャリアから顧客を奪うため、敵対する存在に見える。だがMVNOに回線を貸しているのはキャリアであり、MVNOの利用が増えればキャリアにも収入が入るため、実は必ずしも敵対しているわけではないのだ。

そうしたことから2016年には、キャリアがMVNOを"仲間"として活用するケースがいくつか見られるようになってきた。中でも象徴的なのがKDDIの取り組みである。

KDDIはワイモバイルで先行するソフトバンク、多数のMVNOに回線を提供しているNTTドコモと比べ、低価格サービスの提供で大きく出遅れてしまった。そのことが、低価格を求めるユーザーが他社回線を用いたサービスへと流出し、収入を減らすことにもつながっている。

それゆえKDDIは、傘下のUQコミュニケーションズが、au回線を用いたMVNOとして展開する「UQ mobile」の大幅なテコ入れを実施。auとの販売連携に加え、「iPhone 5s」を正規に取り扱うなど対応端末の大幅な強化を進めているが、より注目されるのが、12月に発表した老舗ISP、ビッグローブの買収である。

KDDIはビッグローブの買収で、ISP事業など固定回線利用者の拡大を図るだけでなく、40万の会員を抱えるMVNO事業を手に入れることで、au回線を用いたMVNOの拡大につなげる狙いもあると見られている。さらにKDDIは、ビッグローブだけでなく、同様にMVNOも展開している老舗ISPのニフティを買収検討しているとの報道も出ている。そうしたことからKDDIは、低価格サービスでの出遅れを、買収によって仲間を増やすことにより、解消しようとしていると見ることもできるわけだ。

KDDIが買収を発表したビッグローブは固定回線のISP大手だが、MVNOとしても40万会員を抱える大手の事業者だ

そしてMVNOを買収して規模を拡大する流れが、KDDI以外のキャリア、あるいは市場での存在感を高めたMVNO大手などに広がっていけば、他社との競争に敗れ存在感が弱まったMVNOの吸収・合併が相次ぎ、市場再編が進む可能性が高まってくるだろう。現在はMVNOの市場が拡大基調にあるが、そうした状況がいつまでも続くとは限らない。それだけに、2017年にMVNO各社がとる選択が、今後の市場動向を大きく左右することとなるのではないかと筆者は見る。