キャリア化するか否かの選択が問われる

キャリアの戦略を踏襲することは、ユーザーの理解を得やすいメリットがある一方で、非常にコストがかさんでしまうというデメリットもある。これまで低コストでサービスを提供することに力を入れてきた多くのMVNOにとって、キャリア化戦略はある意味"賭け"でもあるわけだ。

それゆえ2017年、MVNOの動向を占う上で注目されるのが、各社が事業規模拡大のため、キャリア化戦略を採るか否かという“選択”だ。楽天の「楽天モバイル」のように、体力のある企業はキャリア化戦略をとるのは比較的容易だろうが、多くのMVNOは企業体力が弱い。「FREETEL」ブランドのプラスワン・マーケティングのように、あえてコストをかけてキャリア化を推し進めて勝負に出るか、それとも従来通りSIMを主体とした販売を続けるかという、大きな選択が迫られることになるだろう。

プラスワン・マーケティングはベンチャー企業ながら、通信と端末、サービスを一体で提供する「スマートコミコミ」を提供するなど、キャリアに近い戦略を取り続けている

市場が拡大基調にあるだけに、キャリア化の道を選べば多くのユーザーを獲得し、市場での存在感を大きく高める可能性は高まるが、多額のコストが必要なだけにリスクも非常に高まってしまう。一方で従来通りの戦略をとるならば、リスクは小さいもののユーザー獲得の面では機会損失となり、うまく差異化を図らなければ多数のMVNOの中に埋もれてしまう可能性がある。

実は2017年以降、MVNOの数はまだ増え続けると予想するとの声もある。MVNOの1つであるトーンモバイルの代表取締役社長である石田宏樹氏は、11月30日の発表会において、MVNOの数は2016年時点で561社だが、インターネットサービスプロバイダー(ISP)の数は、やはり市場が立ち上がって数年が経過した1998年に、最大で2651社に達していたと説明。その数字を基にするとMVNOの数はまだ少ないとしており、2017年以降も一層増えると予測している。

トーンモバイルの石田氏は、ISPが最盛期に2651社に上ったことを例に挙げ、MVNOは2017年以降も増加すると予測する

MVNOが現在より一層増えるならば、より“埋もれ”の問題が深刻になる。ユーザー獲得ができないMVNOはいずれ、コンシューマー市場からの撤退を選ばざるを得なくなってしまうだろう。キャリア化戦略をとらないのであれば、将来の生き残りに向け何らかの施策が求められることは確かだろう。