世界規模の覇権争い
自動車業界が、1990年代末から21世紀初頭にかけての世界大再編以来となる激動期を迎えたのがこの2016年だ。2017年はさらなる激動の予感である。
欧州ではドイツのVW、ダイムラー、BMWが、国家を挙げて技術革新の世界基準づくりを進めている。特にVWは、ディーゼル車の排ガス不正問題を受けて電気自動車(EV)への大転換を図り、これに自動運転も連動している。VWは世界最大の市場となった中国でトップシェアを持ち、中国連合のメリットをいかして復権を狙う。
フランスのルノーは、日産との連合に三菱自が加わり、日本のトヨタグループ、ドイツのVWグループ、米国のGMグループらを追う体制が整った。長期政権のゴーン氏には、さらなる拡大の野望もありそうだ。
米国は、トランプ政権への移行でその政策には不透明な部分もあるが、「強いアメリカの復活」を前面に押し出していることもあり、復活してきたGM、フォードの動きから目が離せなくなりそうだ。加えて、シリコンバレー発のIT企業群(グーグル、アップル、テスラなど)の動向を注視する必要がある。すでにグーグルは、伊フィアット主導のフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)と自動運転で提携し、FCA製の車両で公道実験を行なっている。
自動車業界にとどまらない提携・連携形成の動き
電動化と知能化という大きな先進技術革新に向けて、自動車メーカー間の提携だけにとどまらない異業種提携も活発化しそうだ。世界の自動車市場は、最大市場である中国が小型車減税を1年間延長(減税幅は半分)したことで失速リスクは軽減された。第2位市場の米国もピークアウト気配でインセンティブ(販売奨励金)上昇トレンドだが、大型車需要を主体とし、市場ボリュームは2016年の規模を維持できそうだ。インドや回復気配のアセアンなど、新興国がグローバル市場の成長を牽引することになるだろう。
一方、米国ではカリフォルニア州のゼロ・エミッション・ビークル(ZEV)規制で求められるZEV比率が厳しくなり、プラグインハイブリッド車(PHV)、EVの導入促進は同州にとどまらないトレンドともなる。このため、EVやFCVの展開に向けた電池の進化・コストダウンは自動車業界にとって喫緊の課題となる。電池メーカーとの連携は、日本や欧州に加え、中国や韓国の企業も絡んで活発化するだろう。
また、欧州のボッシュ、コンチネンタル、ZFなどのメガサプライヤーの動きからも目が離せない。日本ではデンソーやアイシン精機などのトップサプライヤーがトヨタグループとしての連動を強める一方で、技術革新の動きの中で立ち位置が変わっていく可能性もあるのだ。
いずれにしても、自動車の技術革新のメガトレンドを背景とする合従連衡は、業界の構図自体を変えてしまう可能性を秘めていることは頭に入れておかなければならない。自動車メーカーを頂点とする構図に落ち着くとは限らないわけで、IT企業が主導となることもありうるのだ。2017年の“合従連衡の動き”は、何が飛び出すかわからないという意味でも注視していくべきだろう。