PCMark 8 - Expanded Storage tests

PCMark 8では、Expanded Storage testsを試してみた。これは通常のメイン画面から実行できるStorage testsとは異なるテストだ。Adaptivity testとConsistency testから構成されており、それぞれ10のアプリケーションをシミュレートしている。

Adaptivity testはSteady state(安定)フェーズを10回繰り返してパフォーマンスを計測するのだが、一般的なベンチマークで複数回計測して平均を出すプロセスと同じと思えばよい。

一方のConsistency testでは、8回のDegradation(劣化)フェーズでパフォーマンスの落ち方を確認し、5回のSteady state(安定)フェーズでその後の経過を、5回のRecovery(回復)フェーズで回復傾向を見る。こちらはSSDを使い込んだ状態を確かめるテストと言える。

なお、1台1回のExpanded Storage testsで24時間以上かかる。筆者の手元でもまだサンプル数が少ないため、傾向を掴みきれているわけではない。別の製品を用いて連続2回計測したところでは1回目と2回目の間に明確と言えるほどの差はなく、同じ製品でサニタイズ後にも計測したが、スコアに大きな変化はなかったものの、すべての製品で同様の傾向なのかは把握できていない。

なお、ファームウェアをアップデートすると当然だが、若干傾向が変わることを確認できた。ここからのデータは、WD Blue SSDの初期ファームウェアでの結果としてご覧いただきたい。

さて、このテストについては比較データが欲しいところなので、Silicon Motion製コントローラを搭載する1TB=25,000円前後のエントリークラス製品、WD Blue SSDと同じMarvell 88SS1074コントローラを搭載する1TB=30,000円前後のメインストリームクラス製品を加えてみた。

まず、Adaptivity testとConsistency testの「Multi trace」のスコアと帯域で、ベスト、アベレージ、ワーストを見てみよう。スコアは比較的分かりやすい。アベレージ部分のConsistency testを見れば、メインストリームクラスの製品は両者ほぼ同じスコアだが、エントリークラス製品は若干スコアが落ちている。

このスコアの理由が帯域側のグラフに現れている。今回選んだエントリークラス製品はベストの部分、つまり瞬発力としてはメインストリームクラスを上回るスコアを示しているが、ワーストの部分ではメインストリームを大きく下回る結果となった。平均すると、使い続けるなかでの性能劣化がより大きいということになる。WD Blue SSDに注目して見ると、スコア、帯域ともにほぼ比較対象のメインストリーム製品と同じである。その点、既存の同クラスSSD製品のパフォーマンスから大きく外れるものではないと分かる。

続いてAdaptivity testの詳細を見ていこう。Adaptivity testは10回繰り返されるが、帯域やアクセスタイムはそこまで大きく変化しない。そこで10回の平均をアプリケーション毎に算出しグラフ化している。

リードを見ると、今度は同じメインストリーム製品とも大きく異なる結果であり、さらにアプリケーション毎にクセが出ることが分かる。良い部分も悪い部分もあり、総じて平均すると先のスコア・帯域の結果になるということだ。

なお、WD Blue SSDに着目すると、結構暴れている印象で、良い悪いが激しい。Photoshop_HeavyやAfter Effects、Wordなどは振るわないが、そのほかは特出して良い部分もある。まあ、まだファームウェアの面で最適化が進んでいないといったところだろうか。

一方のライトを見ると、例えばWorld of WarcraftやBattlefield3、Illustratorにも低下が見られた。とくにAfter Effectsはかなり落ち込んでいる。ただ、WD Blue SSDがAfter Effectsと相性が悪いのかというとそう断言できるわけではなく、基本的にはPCMark 8が用意したテストケースと相性が悪いということになる。

データサイズの内訳はPCMark 8のTechnical Guideに記載されているのでこちらを参考にしてもらいたい。ただしワーストケースでここまで帯域が低下、アクセスタイムが悪化することもあると捉えておこう。

ここからはConsistency testの結果を見ていこうと思うが、10もあるアプリケーションの結果をリード・ライトに分けて、それもアクセスタイムと帯域に分けてグラフ化すると煩雑になりすぎる。そこで、代表的なものをピックアップして見ていきたい。

Battlefield 3のWD Blue SSDは、アクセスタイムで見ると比較的良好な結果で安定していた。帯域を見ると、リードについては比較したメインストリームクラスと同等かやや上で推移しており、ライトについてはほかの製品に見られるような瞬間的に転送速度が上がるそぶりはなかったが、Recoveryフェーズでの回復が遅いようだった。

2つあるPhotoshop系のテストのうちのより重いテストとなるPhotoshop_Heavy。WD Blue SSDはここでリードのアクセスタイムが極端に悪くなる傾向が見られた。とはいえ1桁ミリ秒なので問題ないと思われたが、帯域側を見ると、全体的に遅くなる傾向のなかWD Blue SSDはさらに一段遅いようである。

一方でライト側のアクセスタイムは比較的よく、帯域側もSteady stateフェーズまでは最もよいと言えるのだが、最後Recoveryフェーズは先程と同様に回復が遅いように見える。

PowerPointでのWD Blue SSDは、リード側はアクセスタイム・帯域ともにややバタバタしておりRecoveryフェーズで回復する傾向だ。ライト側は面白い傾向で、アクセスタイムは最もよい形でフラット、帯域側もフラットで平均すれば最もよいと言えそうな結果だ。

ExcelでのWD Blue SSDは、アクセスタイムがDegradation~Steady stateフェーズまでを中心に比較した3製品のなかでは良い結果と言える。帯域側は、リードについてはどれも似たり寄ったりで甲乙つかない状態だが、ライト側のWD Blue SSDはここでもDegradation~Steady stateフェーズで比較した製品の中では安定した転送速度を維持していると言える。ただし、Recoveryフェーズでの回復が遅いように見えるのは変わらないようだ。

繰り返し補足しておくと、WD Blue SSDがこれらのアプリケーションを用いた際に、こうしたパフォーマンスとなるというものではなく、あくまでPCMark 8が設定したシナリオにおいてこうした結果が出たというだけのものである。

ゲームであるBattlefield3については多少再現性が高いと思われるが、PhotoshopやPowerPoint、Excelについては、使用者がどのようなファイルサイズをどのようなタイミングで処理するのかに左右される。

WD Blue SSDの傾向をまとめるのならば、やや荒削りな印象もあるが、メインストリームクラスのパフォーマンスと言えそうだ。検証時点では初期ファームウェアだったが、今後最適化が進むことも考えられ、その時には例えばRecoveryフェーズのアクセスタイムや帯域が改善されるのかもしれない。