富士通に残された課題
一方、国内向けには安定感があるものの、海外での展開には若干不安も残る。富士通は国内IT大手3社(富士通、NEC、日立)の中では海外比率が高いほうで、海外進出が進んでいると言えるが、たとえばIBMやオラクル、マイクロソフトなど、なみいる強豪と比べるとまだまだ存在感が薄い。Zinraiそのものは海外でも十分競争力を持った製品と言えるが、海外でも日本と同等のサポートやサービスを展開できるかどうかが、今後の発展に大きく関わってくるように思われる。また、AI関連は進化著しい分野だけに、新しい技術が導入されればすぐにそれらに対応していく必要があるが、果たしてそれがどこまで可能だろうか。グーグルらのように新しい技術やその成果を派手にアピールしていく積極性も求められるだろう。
富士通は2020年度末までにAI関連ビジネスの累計売上を3,200億円とする目標を掲げている。富士通の2015年度の売り上げが4兆7,392億円、国内のSI事業が1兆109億円であることを考えると、5年間の累計で3,200億円(=1年あたり640億円)というのは、数字だけを見れば、富士通にとってそれほど難しい目標には見えない。しかし、富士通が今後AI市場での商機を掴んでいけるかは、海外市場での成功や、新技術を継続的に開発し続けていく開発力の充実にかかっているのではないだろうか。