神経膠腫(しんけいこうしゅ)

神経膠(こう)細胞という脳の神経細胞の周りをサポートする組織から発生している。浸潤(しんじゅん)性が高く、腫瘍の悪性度はIからIVの4段階に分類されている。小児は軽度のIが一般的で、成人になるにつれてグレードが上がっていき、IIIやIVは比較的高齢者に多い。男女比でいうと、男性の方がなりやすい。

福島医師は脳腫瘍の中で神経膠腫が最も恐ろしいと話す。その理由の一つに再発時にグレードが悪化する「悪性転化」がある。

「例えばグレードIIの神経膠腫でも、何年かして再発した際に悪性転化といって悪性度が増すことがあります。IIからIII、ないしは一気にIIからIVになるということですね。これは神経膠腫に特異的に見られる現象で、何らかの遺伝子変異が加わり、腫瘍の悪性度が上がると考えられていますが原因ははっきりとわかっていません」。

もう一つの理由がグレードIVの「膠芽腫(こうがしゅ)」の予後の悪さ。大脳に発生し、周囲の脳に浸潤して広がっていくこの腫瘍は高齢者に圧倒的に多い。進行速度も速いため、この段階になると平均的な余命は1年程度だという。

「グレードIIでも、数年後に再発して悪性転化をしてしまうと最終的にはグレードIVに行き着いてしまい、かなり予後が悪くなってしまいます。そのため、実質的にグレードIIと診断された時点からの全生存期間は平均で7~8年、同じくグレードIIIと診断されてからは3~4年が平均余命になるのではないでしょうか」と福島医師は話す。

神経膠腫の治療は摘出手術が一般的で、腫瘍の摘出量の多寡が予後に反映されるという医学的根拠もある。それにプラスする形で、グレードII以上では放射線治療を、グレードIII以上の重度な患者に対しては放射線治療に加えて化学療法をそれぞれ複合的に実施していく。

髄膜腫(ずいまくしゅ)

脳の表面を保護している髄膜に発生する脳腫瘍。基本的には良性が多く、男女比でいうと女性、特に40~50代の中高年によくみられる。基本的には経過がゆっくりであるため、かなりのサイズまで腫瘍が大きくならないと見つからないことも。一方で、近年は自己管理の一環として脳ドックを実施し、その際にたまたま早期段階で発見されるケースも増えてきている。

「ほとんど良性ですが、一部に脳の細胞内に浸潤しているものや、脳の細胞分裂がとても早くて再発しやすいものもあります。グレードはIからIIIまでありますが、ほとんどはIです。グレードIだと手術して経過観察がほとんどですが、IIとかIIIだと手術した後に放射線治療を行うこともあります」。