TNGAで“仲間づくり”が加速?
今回の技術発表の中で注目されたのは、アイシン精機から昨年4月に専務役員としてトヨタに移り、パワートレーンカンパニーのプレジデントを務める水島寿之氏が、出身の自動車部品サプライヤーの発想で、「(新型パワートレーンは)他のメーカーにも載る技術だ」と述べたことである。
トヨタ以外の他のメーカーについて具体的な発言はなかったが、トヨタと提携関係にある富士重工業(スバル)やマツダ、場合によっては今後提携内容が具体化していくであろうスズキなどへの適用が考えられる。新しいパワートレーンやハイブリッドシステムをグループ内に拡げていくことで、豊田章男社長が言う“仲間を増やしていく”連携の中で、それら仲間の商品構成を支援する根幹技術になっていく可能性があるということだと私は解釈した。
それら自動車メーカーのうち、スズキは独自技術で着実に「エネチャージ」や「S-エネチャージ」、また最新のソリオには新しいハイブリッドシステムを投入しているが、スバルは「XV」に独自のハイブリッド車、マツダは「アクセラ」に前型プリウスと同じハイブリッド車を持つだけで、電動化車両の商品構成は貧弱だ。それでいて、それら自動車メーカーもカリフォルニア州のZEV規制の対象メーカーとなっていくのである。もちろん、すでに述べたように、もはやハイブリッド車はZEV規制に対し何の効力も持たない。
“いいクルマ”にリソースを集中させるために
TNGAは、この先のトヨタ車の在り方を決める基本概念である。その第1弾としてプラットフォームが紹介され、新型プリウスを出始めとし、間もなく「C-HR」というクロスオーバー車にも展開され、さらには2020年までにはトヨタ車の半数がTNGAに基づいたクルマになっていく。そしてこのTNGAは、単にプラットフォームのモジュール化ではなく、パワートレーンにもいえることが、今回の技術説明会で明らかにされた。
クルマの骨格となるプラットフォームと、その心臓部といえるパワートレーンの共通概念化を図ることによって生じる余剰の資源を、「もっといいクルマづくり」の次の一手へ回していくことで、トヨタ車の価値を一層高めるとともに、仲間となった自動車メーカーへもその恩恵が行き渡るようにしていこうという考えが垣間見えてくる。
環境適合性を最先端で高めながら、クルマの魅力をどう消費者に訴求できるか。そこが、これからの自動車メーカーの雌雄を決するという切実な思いと決意を、今回のトヨタのパワートレーン技術説明会から感じるのであった。