また、カリフォルニア州を中心としたZEV規制においても、PHVはその勘定にまだ入っており、これにはエンジンが引き続き搭載されることになる。
すなわち、EVの迅速な開発と商品化、それに合わせて従来型内燃機関としてのエンジンや、国内はともかく世界的な普及はまだ道半ばのハイブリッド車の一層の拡販という2本柱が、世界一の自動車メーカーの戦略であるということだ。トヨタならではの数の原理と、原価低減による販売価格の抑制が、この新パワートレーンの核となる。
エンジン構築要素の統一で開発費を低減
個別に概要を見ていくと、ガソリンエンジンについては、燃焼のアーキテクチャー化を図り、エンジン排気量が異なる新エンジンの開発において、諸元のモジュール化により個別の開発費を抑える開発の仕方を行う。簡単に言えば、排気量の違うエンジン開発においても、エンジンを構築する要素を統一することで、余分な実験や検証を省いて原価を抑えていくということだ。それによって効率の高い省エネルギーなエンジンを開発していき、同時に十分な動力性能も確保する。
今回発表されたエンジンは、排気量が2.5リッターの直列4気筒で、これは中型車以上の上級車種向けであり、従来使われてきたV型6気筒エンジンからの代替であろう。気筒数が減ることで摩擦損失や部品点数を減らすことができ、高効率化と原価低減を両立できる。
変速機(トランスミッション)は多段化を進め、後輪駆動車用のトランスミッションをトヨタ初の10段変速とする。多段化の目的は、エンジン回転数をあまり上下させなくても十分な動力性能を発揮できるように、細かく変速することだ。それによって、エンジン回転の幅の中でもっとも効率の良い回転数域を常に使うことにより、燃費を改善し、同時に十分な加速性能を手に入れる。簡単に言えば、あまり高い回転までエンジンを回さなくても十分な力を発揮させることで、燃費を抑えるということだ。回転を上げると摩擦損失が増えるので、馬力は出ても燃費は悪化するからである。
ハイブリッドシステムも進化
ハイブリッドシステムについては、これまでトヨタの方式には、歯車の大小を切り替えることで変速するエンジン車のような機械的な機構は用いられてこなかった。しかし今回、「Multi‐stage THSⅡ」には、歯車を使った変速機構を採り入れることにより、エンジンとモーターの最適な回転数をより幅広く調節できることになった。
もちろん、これまでもモーターが得意とする低回転域と、エンジンが得意とする中~高回転域をうまく組み合わせることはしてきたが、その最適な範囲は、日本やアメリカなど高速道路での最高速度があまり高くない交通環境での回答であった。今回、機械的な変速機構を採り入れることにより、より高速走行の多いヨーロッパにおいても、動力性能と燃費性能を向上させる手段を手に入れたことになる。したがって、Multi‐stage THSⅡは、高級車向けの後輪駆動用システムとなっている。
加えて、PHV用のハイブリッドシステムも、新しい2.5リッター直列4気筒エンジン用として紹介された。これは、プリウスおよびプリウスPHVの1.8リッター直列4気筒エンジン向けと同様の機構の内容となっている。