Raspberry Pi、初日だけで10万台を売る

Eben氏は、Raspberry Piのこれまでとこれからについて語った。Raspberry Piは元々、教育用として開発されたといわれている。細かい背景としては、2006年にケンブリッジ大学でコンピューターサイエンスを学ぼうという高校生が減って、以前は7倍ほどあったコンピューターサイエンス系の倍率が2倍程度になり、しかも学生のプログラミングスキルが落ちているという事実が発端だったそうだ。

Raspberry Pi財団 創設者&CEOのDr.Eben Upton氏

教育用としてのRaspberry Piの発端は、コンピューターサイエンスを学ぼうと考えるイギリスの高校生が減ったという現状から

理由ははっきりしないものの、以前は高校生を引きつけていた(比較的安価に手に入る)コンピューターが、ゲーム機や一般PCにとって代わられ、プログラミングをする道を消してしまったと考えた。そこで、ギャップを埋めるマシンの開発に乗りだしたという。

安価で興味を引き、壊れにくく、プログラム可能なものが必要で、そして生まれたのがRaspberry Piだ。しかし、共同でお金を出し合って確保できるのは25万ドル。1万台分しか確保できず、供給に問題があると考えていた。しかし、製造ライセンス契約をRSコンポーネンツと合意したことで、資金調達の問題がなくなった。初代Raspberry Piの発売日には実に10万台が売れた。

コンピューターサイエンスのために、安価で丈夫でプログラム可能な機器。そして子供の興味を引くものとして設計された

手持ち資金では十分な製造ができないと考えていたが、RSコンポーネンツと製造ライセンス契約を結ぶことで解決。初日に10万台を売るというスタートダッシュ

また、Eben氏が2013年中ごろ初来日したとき、カメラを販売すると発表したが、現在はソニーのIMX219を使用した第二世代カメラが登場している。携帯ソリューションのためにタッチパネル付きのディスプレイ(7インチ800×480ドットタッチスクリーン)も発売済みだ。ホビイストのロボティックス活用や、産業オートメーションでも使われている。

組込用に使いやすいCompute Moduleを発表しており、小規模なビジネス用途にCPUボードを開発せずに済む利点は大きい。現在は初代製品が販売されているが、2017年に発売予定のCompute Module 3は、NECディスプレイソリューションズの大型ディスプレイに組み込まれるそうだ。

そして品質を重視した「Made in JAPAN」のRaspberry Piも紹介。産業用途などで品質を重視したいユーザー向けに、ソニーの稲沢工場で製造される。当初のRaspberry Piは中国で生産されていたが、イギリスや日本でも製造することで、ローコストコンピューターを先進国で作る実例となるだろうとした。

周辺機器群。カメラモジュールは当初の5Mセンサーから、ソニー製の8Mセンサーを使った第2世代のものへ

タッチセンサー付きのディスプレイも発表済み

組込用途のCompute Module。2017年に新製品が出るそうだが、市場としてはまだ大きくないとのこと

初期のModel Bから大きく3つのバージョン製品が登場。累計1,100万台以上出荷された

UIの専門家がメンバーに加わり、さらに多くのソフトをバンドル

Made in UKが主だったが、Made in JAPANが加わった。「実売価格はあまり変わらない」そうだ