Touch Barを使っていて、どちらかというとキーボードの拡張と言うよりはマウスの拡張、という印象を受ける瞬間が多い。
例えばボリューム調節であれば、マウスでドラッグしていた音量ツマミをタッチ操作で調節できた方が素早いし、画面に表示されるダイアログの確認ボタン(OK、キャンセル、といったボタン)をトラックパッドを使ってカーソルを合わせるよりは、Touch Barに出てくるボタンを直接タップする方が快適だ。
その点で、ファンクションキーがなくなったとか、ATOKで今現在何も起きないといったことは、Touch Bar自体の評価にさほど大きく影響しない、というのが筆者の考えだ。
個人的には、絵文字ピッカーは素直に面白いと思う。
いままで、iMessageやFacebookメッセージを使う場合、Macからだと絵文字を使う気になれなかった。たしかに画面から選択する絵文字ピッカーはあったし、「にこにこ」「なみだ」と入力すれば絵文字が変換候補に現れたため、入力する方法はあったが、日本語を意識しながら絵文字を入力する、というのがいまいちで…。
Touch Barの絵文字機能は、文字入力をしている場面であれば常に右側に表示されており、すぐに絵文字キーボードを呼び出すことができる。
その延長となるが、例えばメッセージアプリで採用されたタップバック(リアクション機能)や、iPhoneなどで対応しているiMessageステッカーを指先で選択できるようにしても良い。しかしこうなってくると、文字入力というMac内でのユニバーサルなアクションから、個別のアプリ使用時の機能になってしまうことから、「それはアプリそれぞれで実装して下さい」という話になってしまう。
iPhoneやiPadは、画面が入力インターフェイスを兼ねているため、文字入力もそうしたアプリの機能も、1つの連続した操作体系の中に収められている点が、マルチタッチディスプレイらしさといえる。
MacBook Proでは、タッチパネルディスプレイをこの細いTouch Barという領域でのみ実現しているので、その位置づけがアプリや操作状況に応じて、キーボードよりだったりトラックパッドよりだったり、はたまた画面内のツールバーよりだったり、といったり来たりしている。
良く言えば文脈に応じて使える、ということになるのではあるが。
松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura