「格安スマホ」という言葉とともに認知度も普及率もアップし、全国で500社を超えるというMVNO(仮想移動体通信事業者)。景気低迷の中、高止まりで家計を圧迫する通信費削減の切り札として、総務省なども大いに期待する存在だ。そんなMVNOは加熱する価格競争というフェーズを終え、新たな競争の段階に入っている。

MVNOの数は500社を超える。今年9月にはLINEがMVNO参入するなど話題に

第1ステージ:料金競争の終焉とサービス開拓への移行

自社で通信網を持つキャリア(MNO)に対し、MNOから回線を借り受けて、独自の価格設定やサービス内容で展開するのが「MVNO」だ。日本でMVNOが注目され始めたのは、スマートフォンが主流になってから。MNOのスマートフォン向け通信プランは比較的高額なこともあり、それよりだいぶ安い価格設定のMVNOは「格安スマホ」として認知度を上げてきた。

MVNOの普及初期は、低価格が最大の魅力として考えられてきた。特にMVNOがユーザーごとの回線速度を制御できる「レイヤー2接続」が可能になってからはその傾向が顕著になり、MVNO各社は積極的に安さをアピールするようになった。

結果として、今ではデータ通信のみであれば月額500円未満という超低価格なサービスも提供されており、MVNO同士で利益を削りあって争う、体力勝負となってしまった。

MVNOの仕組みとして、MNOからの回線レンタル料以下に料金を下げることはできず、価格競争には限界がある。このためMVNO各社は料金競争から付加価値競争へと舵を切ることになった。

第2ステージ:独自サービスの模索と模倣

MVNOは当初、データ通信のみのサービスが多く、ユーザー側もメインの通話用回線としてキャリアの携帯電話を契約し、MVNOのSIMを挿したスマートフォンはデータ通信専用に使う、といった使い分けをしていた。しかし、LINEや各種ソーシャルゲームなど、SMSをユーザー認証に使うサービスが増えたことなどにより、オプションでSMSや音声通話のついたサービスも登場してきた。

単純な価格競争では疲弊するだけだと悟ったMVNO各社は、他者との差別化を図るための独自サービスの提供へと進むことになった。独自サービスの提供は、MVNO自身が開発力や資本力など、競合他社と比べて傑出した部分があることを示すひとつの指標になる。これが2015年前後から始まった、MVNOの第2ステージとも言える状況だ。

独自サービスにもさまざまな形態があるが、主にシェアが高めな大手MVNO各社が力を入れたのがサポート体制だ。第1ステージでは、MVNOユーザーは自分で情報を集め、問題に当たれるITリテラシーの高いユーザーが多かった。