偽造医薬品などが出回ってしまう原因として、インターネット上に膨大に存在する不正な販売サイトがあげられる。この問題と対策について、レジットスクリプト社の岡沢氏が現状を語った。

レジットスクリプト社 アジア政策・執行部長の岡沢宏美氏

レジットスクリプトはアメリカで監視や調査、情報提供などを行っている会社で、ヘルスケア製品に関する世界最大のデータベースを保有している。政府機関やインターポールと提携し、インターネットを安全に、透明性があるものにするため尽力している「公益のための私企業」だとしている。日本においては厚生労働省と連携し、不正医薬品販売ウェブサイトに対する対策を行っているという。

現在、世界中には約3万5,000~5万もの処方箋医薬品を扱うオンライン薬局が存在するが、その97%は不正なサイトだという。日本語サイトはそのうち2,000~3,500程度だが、その99%以上は薬機法に違反して運営されている。同社は昨年1年間で1万件以上のサイトを閉鎖させ、日本語サイトも1,900件以上を閉鎖させた。だが、不正なサイト運営者は次々に新しいドメインを取得し、どんどん増えてしまっているのが現状だ。

不正な販売サイトは特定のレジストラに集中

同社では、不正なサイトを発見するとレジストラ(ドメイン名登録会社)に「違法行為がある」と通知。サイトを停止し、ドメインが移転できないようロックをかけるように要請している。その根拠として、違法行為を無視することはレジストラ認定規約違反となるため、レジストラは違法行為が発覚した時点で何らかの対処をしなければならない。

世界中には500以上のレジストラが存在するが、不正薬販売のウェブサイトの半数はたった12のレジストラに集中しており、その中には日本の企業も含まれている。多くのレジストラは要請に対し快く対応してくれ、閉鎖やロックに協力してくれる場合がほとんど。しかし、日本企業含め、協力的ではないレジストラも存在すると岡沢氏は話す。

「不正ウェブサイトは、閉鎖されないために、閉鎖されにくいレジストラに集中してしまう。最近はED治療薬だけでなく女性向けのダイエット薬品などの不正販売もよく見かけるようになりました。(特定の)日本のレジストラは『運営者に指導のメールを送った』などの対応はするが、閉鎖やロックの実績はありません。諸外国に比べ非常に遅れている」と岡沢氏は肩を落とす。

アメリカでは、直接薬に触れていないレジストラなどの「第三者の業者」であっても犯罪ほう助や共謀に問われると考えられている。日本も国際的なアプローチと歩調を合わせ、公機関と私企業が連携して消費者にとって安全なインターネット環境を整えていく必要性があると岡沢氏は訴えた。

インターネットで処方箋医薬品が購入できると、とても便利に感じてしまうかもしれない。日本では個人輸入が制度上認められてはいるが、現状ではさまざまな危険性が懸念され、正規の薬を安全に入手できるかどうかを判断することは非常に難しい。今一度、一人ひとりが薬の購入について慎重に考えるべきではないだろうか。