偽造品の化学分析を行った結果、有効成分が約150%と過剰に含まれているものもあれば、有効成分がほとんど含まれていないものも確認された。また、正規品には存在しない用量の「100㎎」を正規品として販売しているところや、正規品には含まれていない成分が検出されたものなどもあったという。

「承認用量以上が含まれている場合、予期せぬ副作用が引き起こされる可能性があるだけでなく、本来ならば含まれていない成分などが含まれていた場合、未知の症状が発現する可能性もある。死亡に至るような重篤な副作用も考えられます」と警鐘を鳴らした。

粗悪な薬で耐性菌がまん延

続いて、金沢大学の木村教授が偽造医薬品に対する国内外の取り組みについて説明した。

金沢大学 大学院医薬保健研究域薬学系 国際保健薬学研究室の木村和子教授

WHOでは、偽造医薬品を「同一性や出所起源に関して故意に虚偽表示した医薬品」とする犯罪行為だとしている。問題がある医薬品として「規格外医薬品」と呼ばれるものもあり、こちらは技術的問題で「許可を受けた製薬会社により製造された正規の製品で、規格基準を満たさないもの」と定義している。

このような偽造医薬品や規格外医薬品はED治療薬だけでなく、多くの薬でまん延しているという。例えば、2015年にノーベル生理学・医学賞を受賞したトゥ・ヨウヨウ氏による熱帯熱マラリア特効薬においては、東南アジア5カ国で最大64%が偽造品だとのこと。

このような品質の悪い医薬品は、効果がなかったり思わぬ副作用の症状が出てしまったりすることだけが問題ではない。偽造抗生剤においては、抗生物質含有量が少ないことにより、耐性菌の温床となってしまうという。病気が治らないばかりでなく、悪化させてしまうのだ。

また、海外においては大手製薬会社であっても、故意に規格外医薬品を製造している疑いもあるという。製造した工場によって高品質であったり規格外であったりし、流通させる国によって作り分けていることも推察される。木村教授はこのような薬を「ダブルスタンダード薬」と呼んでいる。

偽造医薬品や規格外医薬品は耐性菌などの温床になりうる

大手製薬会社であっても意図的な規格外医薬品の製造が疑われている

日本においては、正規の流通ルートが確立されているため、医療機関による処方で偽造品や規格外品が出回ることはほぼ無い。しかし、個人輸入となると話は別だ。「一人ひとりの国民の意識が大切。多くの人にこの問題を知ってほしい」と木村教授は締めくくった。