諸刃の剣にならないか

ソフトバンクグループが純有利子負債の削減をせざるをえず、ファンドを介した投資で情報革命を推進しようとしていることはわかる。現状のままではアリババ株などを放出して資金を作らない限り、ソフトバンクグループとして巨額投資という手段が取れないということなのだろう。

いずれにせよ、ソフトバンクグループからは、英アームのような巨額買収はなくなるだろう。逆にいえば、ファンドが存在し続ける限り、ソフトバンクグループは巨額投資を行わないことを明言したようにも思える。そのことは、ソフトバンクグループが掲げる「情報革命で人々の幸せに貢献」というビジョンの大きさを狭めかねないのではないだろうか。ファンド経由での投資はいずれイグジットされることになるし、ソフトバンクグループからの投資額はファンドを超えられない。とりうる方法をある程度限定してしまうからだ。投資事業でもビジョンを叶えることができるというのだろうか。

現状を打破するのに、ファンド設立は面白い選択だ。だが、それはファンドが成功を収め、十数年以上も経ったとき、ソフトバンクグループにとって正しい選択だったといえるのか。諸刃の剣に見えてしまう今回のファンドの設立。事業家から投資家に転身する孫氏は、この先どんなビジョンを描いていくのだろうか。