カーシェアの課題を解決するスマートキーボックス

ここで具体例として発表されたのがSKB、スマートキーボックスだ。より安全かつ便利なカーシェアを実現するためのデバイスである。

従来のカーシェアは、会員カードでドアロックの解錠を行ったあと、グローブボックスに隠されたキーを使いエンジンを掛けるという原始的な手法が主流で、セキュリティ面で問題があった。しかしSKBなら車内に設置するだけで、スマートフォンでドアロックの開閉、エンジンの始動が可能。カーシェアのスマート化を一気に進めることができる。

キーの受け渡しに関するセキュリティ問題はカーシェアの懸念材料。トヨタはSKBで課題解決を図る

トヨタではこのSKBを使ったパイロットサービスを、米Getaroundと共同で、来年1月から始めるとしている。日本ではトヨタ系レンタカーなどでの展開を考えているそうだ。

今回の発表会では、今年度中に発売が予定されているプリウスPHVについての言及もあった。プリウスPHVでは、ポケットPHVというサービスを提供予定としている。スマートフォンで乗車前のエアコン設定やバッテリー状況の確認、充電ステーションの検索などができる。

次のプリウスを「コネクティッドの先陣」(友山専務)と位置づける

ただ、同様のサービスは日産リーフなど、一部の電気自動車やプラグインハイブリッド車でも実用化されている。他の環境対応型自動車に並ぶデバイスを手に入れたという表現のほうが適当かもしれない。

プラットフォーマー宣言のトヨタ、ITの巨人達に対抗できるか

自動車メーカーでここまで明確なプラットフォームの構築に言及した会社は異例だが、課題もある。IT企業に目を転じれば、GoogleやAppleなど、すでに自前のプラットフォームを持っている会社がいくつもあることだ。

友山氏はこうした他社のプラットフォームに対して、協調できる部分では協調していきたいと述べた。しかし車載情報通信システムでも、AppleのCarPlayとGoogleのAndroid Autoは競合関係にあるなど、現実は厳しい。トヨタのMSPFも早々に、競争社会に直面するはずだ。

ではトヨタの強みは何か。筆者はやはり、ものづくりだと考える。今回の発表会でも、個人的にいちばん刺さったのはSKBだった。今のクリエイティブシーンはたしかに、モノよりコトのほうが注目を集めやすい。しかしトヨタは80年以上もの間、ものづくりでやってきた会社だ。コトよりモノのほうが得意という経歴が、SKBにしっかり表現されていた。

プラットフォームという漠然とした枠組みの中で、いかにして人々の心を掴むものづくりを表現していけるか。それがIT企業と対峙するうえでのトヨタの肝になるのではないかと、この日の発表会に参加して感じた。