Adobeは、iPadやAndroidのアプリに対して、デスクトップ向けのアプリケーションとは異なる役割を付与しようと考えている。デスクトップ向けでは実現できないモバイル環境でのクリエイションや、手に収まるタッチデバイスやカメラを制作に持ち込む意味はもちろんだが、もっと異なるターゲットのためのもの、という意味合いがある。
スマートフォンやタブレットでスケッチができるPhotoshop Sketchや、写真編集のLightroom Mobile、Photoshop Fix、Photoshop Mixなどの写真・画像関連のアプリは、どれも無料で利用することができる。そこで作成した作品は、後にCreative Cloudを購入したとき、デスクトップのアプリケーションにそのまま読み込むことができる。
つまり、モバイルアプリは、Adobeのクリエイティブアプリ購入の動機となる「きっかけ」をユーザーにもたらす役割を担っている。Adobeによると、モバイルアプリから新たにアカウントを作ったユーザーは、既に3,500万人を数える。
モバイルでの利用シーンを広げるため、Adobeは今回のAdobe MAXのプレゼンテーションで、「Adobe Spark」と呼ばれる製品群を強化した。Sparkはウェブとモバイル向けに用意されるアプリ群だ。
Adobe Spark Postは、写真をテンプレートをカスタマイズしながらデザインに変えるアプリだ。テンプレートにはデフォルトの画像やフィルタ、フォントが選ばれており、自分の写真とテキストを当てはめれば、すぐに見栄えの良い写真ができあがる。さらにSpark Postでは、InstagramやFacebook/Twitter、Pinterest、YouTubeビデオのサムネイル画像など、日々のコミュニケーションやオンラインでのクリエイションで必要な、しかし面倒くさいリサイズの作業をワンタッチで行うことができる。
Spark Videoもテーマを選び、写真やビデオを並べ、文字編集や音声を録音することで、スライドショー形式でアイディアやイメージを伝えるショートビデオを瞬時に作ることができる。Spark Pageも、テンプレートから見栄えのするページをすぐに仕上げて共有できる仕組みだ。
Sparkアプリ群は、モバイルデバイスを、カジュアルな日々のデザインツールに変えることで、クリエイティブに属さない人も日常生活でAdobeのデザインアプリに触れるという導線の構築を狙っている。これらのアプリでの制作は、SNSでのコミュニケーションの幅を広げるに留まらず、オフィスワークの中のドキュメントに転用したり、デザインの仕事の一部に取り込むことも可能だ。
こうしたモバイルアプリは、Adobeのプロフェッショナル向けデザインツールと一般の人々をつなぐ架け橋として、簡単さ、実用性、そしてなによりできあがりの素晴らしさを追究しつつ、今後の発展が期待される。