女性ユーザーを意識した作りに

まずパッケージングは、ムーヴと同等の全高でありながらスライドドアを備え、後席の折り畳みを簡略化した代わりに、座面の下に引き出しを用意するという仕掛けを織り込んだ。

後部座席は引き出し付き

スタイリングは、最近の日本車としては無駄なプレスラインが少なく、シンプルかつプレーンな造形だ。でもそのままでは商用車っぽく見えてしまう可能性もあるので、ムーヴキャンバスは独特の塗り分けのツートンカラーを用意するとともに、クロームメッキのアクセントをあしらった仕様を用意することで、個性的に見せている。

インテリアも一部にボディカラーを入れたりして、こちらも実用車っぽくない雰囲気を作り出すことができる。ただ前席はかなり前まで伸びたルーフのために上方にある信号が見えにくく、後席は座面下の引き出しも床も黒なので見分けがつきにくいなど、改良を望みたい部分もあった。

女性ユーザーがメインだからなのか、エンジンは自然吸気のみで、ターボはない。背が低いとはいえスライドドアを持つので、車両重量はタントとほぼ同じだ。よって発進や追い越し加速で、もう少し力が欲しいと感じることがあった。もっとも回り方は滑らかなので、回転を上げても気にならなかった。

乗り心地はまろやかで、なかなか快適だ。となるとハンドリングが不安になる人もいるだろうが、車高がタントより低めということもあり、安心してコーナーを通過していくことができた。

スタートダッシュは成功、将来性はいかに

ダイハツは10月11日、発売から約1カ月が経過したムーヴキャンバスの累計受注台数を発表した。月販目標台数5,000台に対し、4倍にあたる2万台の受注を集めているという。主な購買層は20~30歳代の女性とのことで、狙いはドンピシャだったようだ。

しかし今後もこの状況が続くとは限らない。そもそも女性の晩婚化は社会的には問題とされており、積極的な子育て支援を行っている石川県小松市など、いくつかの地方都市では対策を打ち出しているからだ。

しかもダイハツの親会社であるトヨタ自動車が、軽自動車の分野でダイハツの最大のライバルであるスズキと、業務提携に向けた検討を始めたというビッグニュースが発表された。提携が順調に進めば、ダイハツとスズキの軽自動車作りそのものが変わっていくこともあり得る。

ムーヴキャンバスは典型的なマーケットインのクルマである。でもそのマーケットは、さまざまな外的要因で激変する可能性があることもまた確かだ。