見えてくるリアルなマーケット
東京への一極集中が問題となり始めて久しい。しかし総務省が今年発表したデータによると、全国の大都市圏で人口増加率がもっとも高いのは東京23区ではなく、福岡市だ。さらに首都圏にある横浜市より、仙台・札幌・広島・名古屋の増加率が上回っているという数字もある。
首都圏や京阪神圏と比べると、これらの大都市圏は公共交通が発達しておらず、移動のかなりの部分を自家用車で賄う必要がある。しかし、地方のように広い敷地の一軒家に住める世帯は少ないから、ひとり1台という感覚でクルマを選ぶことは難しい。大都市圏で晩婚化がより進行していることも、各種データで明らかになっている。
つまり首都圏や京阪神圏以外の大都市圏では、ダイハツが注目している、30~40歳代の未婚女性と親が同居する世帯が多いことが想像できる。しかも彼女たちは、移動にクルマが必需品という状況でもある。ムーヴキャンバスのマーケットがリアルに見えてくるのだ。
軽自動車だから可能な“割り切った”クルマづくり
ムーヴキャンバスは、ガラパゴスのさらに一歩先を行くニッチな商品と言えるかもしれない。でも逆に、1~1.3Lエンジンを積むコンパクトカーでは、ここまで割り切った作りができないのも事実だ。
コンパクトカーを作る際、メーカーはスケールメリットによってコストダウンを図る傾向が強く、グローバルモデルとして開発することも多い。日本で生産されない車種すらあるぐらいであり、当然ながら我が国の未婚女性と親の同居世帯のことなど、ほとんど眼中にはない。
その点、軽自動車は日本国内専用規格だし、ボディサイズや排気量の上限が決まっているのでプラットフォームやパワートレインは共通化しやすく、パッケージングやデザインの自由度は高まる。こうしたメリットを生かし、きめ細かいニーズに沿ったものづくりを進めているのだ。
ではその結果、ムーヴキャンバスはどんなクルマになったのか。