自動車メーカーのウェブサイトと言えば、販売車種を写真や動画で紹介するカタログがメイン。そんな中でトヨタ自動車は、プリウスを素材に大胆なプロモーションを展開した。作家やミュージシャンが登場し、ガムやコーヒーまで製作した、その真意とは。担当者に伺った。

現行プリウスの違いを表現するために

今回お話を伺ったのは、トヨタマーケティングジャパン(TMJ)のプロモーション室、第1プロモーショングループで主任を務める齋藤隆幸氏。TMJは7年前、トヨタ自動車の宣伝部が独立することで誕生した。

トヨタマーケティングジャパンの齋藤氏

トヨタ自動車のマーケティング活動を、よりスピーディに、よりユーザーの側を向いた内容にしていくことがTMJ設立の目的。そのために何を、どのように展開するかという企画の部分から一任されているそうだ。今回取り上げる「TRY! PRIUS」というキャンペーンも、こうした体制の中で企画が立ち上がった。

「これまでのプリウスのお客様は50~60歳代が中心でした。しかし(現行の)4代目は、TNGA(Toyota New Global Architecture)の第1号車としてゼロから設計したクルマであり、走りや乗り心地にもこだわっています。それを若者をはじめ、今までプリウスに興味を持たれなかった多くの人に伝えたいという気持ちが、思い切ったことをやろうという決断につながったのです」(以下、発言は齋藤氏)。現行プリウスのテレビCMは、福山雅治さんを起用するなど大胆な内容となっている。しかしトヨタとしては、ただのモデルチェンジではなく、走りが大きく変わったことを、別の形でもアピールしたかったのだ。

ネットでのクルマ選びが増加、試乗機会は減少

特に他社のクルマに乗るユーザーに、走りの良さを体験してもらいたかった。しかし販売店にヒアリングを行うと、他社のユーザーほど、トヨタの販売店に行って試乗することはハードルが高いと感じているという意見があった。そこでさまざまなジャンルの人々にプリウスの走り味を表現してもらい、少しでもプリウスを身近に感じてもらうことにしたそうだ。

「最近のお客様は、複数の販売店に足を運んで品定めすることはあまりなく、インターネットで情報を集め、車種を絞り込み、最後に確認のために試乗をするパターンが多くなっています。若い人ほどその傾向が強いようです。そんな人たちに、とにかく乗ってもらいたいという気持ちがありました」。