フェーズ2で改めて問うラジオの価値

ラジオがネットという新たな伝送路(ラジコのこと)を整備したことで、リスナーの減少に歯止めをかけ、一部ではあるが若年層の新たなリスナーを獲得したのがフェーズ1の成果。フェーズ2はリスナーのみならず、放送局や広告主を含む多くの関係者にとってもラジオの価値を再認識する契機となりそうだ。

タイムフリー聴取対応前のPC版ラジコ。ラジオ本放送との同時配信だったので、選べるのは放送されている番組だけだった

リスナーにとってみれば、タイムフリー聴取でラジオの聴きやすさは大幅に向上する。時間が合わなくて聴けなかった番組でも、これからは移動時間などを利用して好きな時に聴くことができるからだ。タイムフリーであれば、ネットなどで話題となった番組を後から聴くことができるため、ラジオに馴染みのない人がリスナーになる機会も増えると見られる。ラジコは広告を含めてラジオ番組をそのまま放送しているので、広告主にしてみても、自社のCMがより多くのリスナーに届くのは利点といえるだろう。

シェアラジオは新規リスナー、とりわけ若年層にリーチするうえで効果がありそうな機能だ。今は少数派と思われる若いラジオファンにしてみれば、自分の好きな番組を、SNSで友人とシェアできるのは面白い仕組みに映るだろう。「若い人にとって(ラジオが)身近なものになる」というのが三浦教授の見立てだ。ラジコであればPCやスマホの画面も活用できるので、例えば番組をシェアする際に、好みの画像を添付できるような仕組みも検討中だという。

独自の番組制作がますます重要な時代に

ラジコは現在地の放送しか基本的には聴けないが、月額350円(税別)で「ラジコプレミアム」に加入すれば全国の放送をエリアフリーで聴くことが可能になる。エリアフリーとタイムフリーが組み合わさることで、ラジオ放送局が番組制作の力を発揮する余地は大いに拡大すると三浦教授は語る。

ラジオが後から聴ける今、「例えばデスメタルしか流れないような」コアな番組を、一般的にラジオを聴く人が少なくなる深夜から朝方にかけての時間帯に放送することも真剣に検討すべきアイデアだ。それが地方局で放送されていたとしても、エリアフリーであればリスナーの住んでいる地域は関係ない。「思いっきり振れている番組」を制作することで、固有ファンを獲得できるチャンスが全国の放送局に訪れたのだ。ラジコでは無料アカウント登録の導入も検討中とのこと。アカウントを作ることができれば、リスナーは自分の好きな番組を集めた「プレイリスト」をラジコ上に作成することが可能になる。

タイムフリー化により広告費が増えれば、放送局は今よりも多くの資金を番組制作に投入するようになるはずだ。この資金は既存番組のブラッシュアップにも使えるし、とがった新番組の制作にも使えるだろう。番組が面白くなればリスナーが増えて、ラジオの広告媒体としての価値は更に向上する。ラジコのタイムフリー対応をきっかけに、ラジオ業界が上昇スパイラルに突入するイメージが描けるわけだ。

ラジオ番組の面白さが求心力となり、多くのリスナーが集まるようになれば、今度はラジコが外に向かって広がるフェーズ3が始まる。ラジオのプラットフォーム化とは、どのような将来像なのだろうか。